■八百屋で季節に会える嬉しさ

 私は八百屋をのぞくのが大好きです。

 紫紺に光るナス、白い肌が美しい小カブ、真っ赤なトマトやニンジン…。季節ごとに、さまざまな野菜や果物が生き生きと並んでいるのを見ると嬉しくなって、あれもこれもとつい買い込んでしまいます。

 「アラもう根三つ葉? アラたけのこ!」と季節を感じさせてくれるのが、八百屋の店頭ですね。

 珍しい野菜があると、その料理法を教えてくれたり、たとえばじゃがいもでも、「何になさるんですか」と聞いて、料理にあったほうの品種を選んでくれたり。

 大根というと大半が青首大根ですが、料理によっては食感が合いません。なますなどにはやっぱり身がしまって辛味のある三浦大根を使いたい…。店の人とのそんな会話もまた楽しみです。

東京八百屋ファンクラブ会長 岸朝子


 最近、マスコミでも野菜の特集が目立ちます。それだけ野菜の味や栄養が見直されてきているのでしょう。また、三浦大根、亀戸大根といった地方野菜復活の動きがあるのもうれしいこと。

 日本人は昔から野菜をよく食べました。お店に並ぶ野菜の種類も豊富です。野菜の力、その利用法をよく知っており、いろんな料理を生み出しています。日本食が世界的に認められているのは、野菜のバラエティとそれぞれの個性を引き出すレシピがみごとだからでしょう。

 その一方で、野菜の本当の味を知らない日本人も増えています。先日、輸入もののごぼうを口にしましたが、ほとんど味や香りがありませんでした。旬に恵まれた日本にいて、これほどもったいないことはありません。

 野菜は一生懸命につくった農家の心がこもっているもの。それを消費者に伝えるのが八百屋さんです。農家と八百屋と消費者がつながり、みんなが元気になることを願っています。

 

【岸朝子(きし・あさこ)氏 プロフィール】

1923年(大正12年)東京生まれ。女子栄養学園(現在の女子栄養大学)を卒業。
食に関する職業をと、32歳のとき主婦の友社に入社、料理記者としてのスタートをきる。その後、女子栄養大学出版部に移り、「栄養と料理」の編集長を約10年務める。その間、食べ歩き、器の楽しみなどに関した、新しい企画で販売部数を2倍に伸ばす。その後、昭和54年に、エディターズを設立。料理、栄養に関する雑誌や本を多数企画、編集する。一方では、東京国税局の東京地方酒類審議会委員(〜1994)や国土庁の食アメニティコンテスト審議会委員などもこなす。1993年(平成5年)より、フジテレビ系「料理の鉄人」の審査員として出演。的確な批評と「おいしゅうございます」のことばが評判になる。モットーは、「おいしく食べて健康に」。2006年、フランス食文化の普及に努めた功績が認められ、農事功労賞シュヴァリエを受賞。
「東京の五つ星の手みやげ」「東京 五つ星の甘味処」東京書籍、「岸朝子のおいしいお取り寄せ」「岸朝子のおいしい長寿のお取り寄せ」「岸朝子の元気ごはん」文化出版局、「岸朝子の味つけのキホン―正しくはかれば「おいしい」は簡単!」山海堂、「岸朝子 日本の食遺産 至極のお取り寄せガイド」ワニブックスなど、著書多数。