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■2025年3月16日 第12回 修了式 〜 講演「国産果物の現状」「青果物輸送の仕組みとこれからの展望」について 一般社団法人フルーツマエストロ協会/青果物流通ジャーナリスト 近藤卓志氏
◇はじめに
久しぶりに八百屋塾に伺いました。近藤栄一郎理事長とは25年以上のおつきあいです。当時、私は新聞記者をしていました。若手でも1番光る存在といわれていた近藤理事長に取材を申し込み、お店に行ったのが最初と思います。今日はジャーナリストとしての先輩や、趣味の同級生、そのほかお世話になった懐かしい方々がたくさんいらっしゃいます。
今日は、果物業界の現状と物流輸送の仕組み、さらにまだ出ていない農林水産省の果樹部会の情報も少しお伝えします。
一般社団法人フルーツマエストロ協会
青果物流通ジャーナリスト
近藤卓志氏
今、日本の果物業界は危機的状況です。みなさんも、果物は高いと感じているでしょう。モノが減れば、市場原理で高くなる。作る人がどんどん減って、高くなっているのが現状です。
2024年度に日本人の果物摂取目安量が正式に決まりました。根拠つきで200グラム。前からあった果物200グラムには根拠がありませんでした。今回は、多くの先生方が話し合い、果物を200グラムぐらい食べている人の方が健康が維持できている、といったエビデンスも含め、正式に200グラムと国が打ち出しました。ところが、全国民が200グラム食べると国産の果物では足りません。
最も果物を食べている年代は70代、次が60代、その次が50代。20〜30代は、平均50グラム、まったく食べていない人が半分ぐらいと推測されます。みなさんには、先ほどの柴田実行委員長からのお話のように、若い人たちに向けて果物を食べるアイデアや情報の発信をお願いします。
◇国産果樹の栽培状況
2022年の果樹の栽培状況をみると、最も多いのは温州みかん。次はりんごです。西日本はみかんなどの柑橘、東日本はりんご。これは気候によるものです。それ以外に、山形のさくらんぼ、山梨の桃、岡山のぶどうなど、県ごとに特異性があります。
品目別に、栽培面積、生産量、生産額をまとめると、みかんは、栽培面積と生産量はトップですが、生産額は3位。りんごは、栽培面積、生産量、生産額すべて2位。生産額1位はぶどうです。栽培面積4位、生産量5位ですが、生産額は1位。シャインマスカットのような品種と、その系統のものが出て、非常に人気があり、売れています。栗は栽培面積が5位ですが、生産額は11位です。
次に、1960年から2021年くらいまでの国産果実の生産量と輸入量の推移です。1960年は高度成長期に差し掛かってきた頃です。国産では圧倒的にりんご、みかんが多く、「その他の果物」を合わせても、りんご、みかんには全然及びません。当時は輸入規制があり、1961〜62年にバナナが解禁になりました。八百屋塾の創始者である江澤先生に、「当時のバナナは病院に入院すると食べられる、というくらい高級品だった」と聞いたことがあります。その後、1972年頃にりんご、1991年頃にオレンジが解禁になりましたが、果樹を栽培されている方たちの反対運動が盛んでした。結果的には輸入解禁になり、その後はWTOも輸入自由化に向かっています。ただ、最近、アメリカが打ち出した自国第一主義で、方向が変わりつつあります。
国産果実の生産量は、1979年頃がピークで、特にみかんは370万トンぐらいありました。その後、国産みかんの需要が減り、今では1/4〜1/5ぐらい。国産が減るに従って輸入が増え、現状は、半分以上が輸入、国産は4割ぐらいです。
国産と輸入の内訳をもう少し詳しく見ると、国内需要の38%が国産品、62%が輸入品。国産品は生で食べるものが圧倒的に多く、8割以上。加工品は12%で、一般的に大産地が規格外品をジュースに加工しています。輸入品は、生鮮用が4割で、6割近くが加工用です。生鮮用ではバナナが60%と圧倒的に多く、パイナップル、キウイフルーツなど。ジュース用には、りんごとオレンジ。ジュースのほとんどに、輸入の果汁が入っています。りんご果汁の多くは中国、オレンジ果汁はブラジルからですが、去年あたりからブラジルが不作で少し減りました。気候変動の影響ではないでしょうか。
2021年のデータによると、日本の農業総生産額のうち、果樹は約1割、ぶどう、りんご、みかんの3つで半数以上を占めています。
国産果実の産出額の推移は上がっていますが、これは、作る人が減ってモノがなくなり、値段が上がっているということです。20年ぐらい前、国は、いいものを作って単価を上げよう、という高品質化の方針を出しました。その結果、所得の高い人は食べ、低い人は食べられない。50〜70歳代が果物を多く食べているのは、所得が高いからで、20〜30代は手が出ない、という状況が起きています。
果樹の栽培面積と生産量はどんどん減っています。果物を食べる人が少なくなったから作らないという方もいるし、未来が見えないから子どもには継がせないという方もいます。
購入数量は70代が多く、次いで60代、50代。女性の方がやや多い。20〜40代は平均にもまったく届かないぐらい食べていないのが現状で、大きな課題となっています。
こうした状況を背景に、私たちは、一般社団法人フルーツマエストロ協会という団体を設立しました。日本の果物をもっと元気にしたい、果物で世界を幸せにしたい。それには果物を食べやすい環境にすること、若者たちが食べる意欲を持つことが大事だと考えています。
私は、もう1つ、青果物健康推進協会というNPOに所属しています。21年前に発足し、元農水省の官僚だった村上秀徳が理事長を務めていますが、公益財団法人中央果実協会の理事長も兼務しているため、その事業を青果物健康推進協会が行うことはできません。そこで、新しくフルーツの団体を作り、国からの事業を受託して、さまざまな活動を行っています。
◇国の方針について
1961年にできた農業基本法は、1999年に食料・農業・農村基本法に変わって、去年改訂され、10月から基本方針を作るための会議を重ねました。今月末、農水省に答申を出します。
3本ある柱の中で注目したいのが、「果樹農業の振興に向けた基本的な考え方」で、その理念は次の通りです。「わが国では、多様な気候や土地条件のもと、地域の特徴に応じた多種多様な果樹が栽培されており、北海道から沖縄まで地域ごとに特色のある果樹農業が展開されている。果樹農業はわが国の農業産出額の1割を占めるとともに、地域経済にとって重要な産業であり、特色ある豊かな文化の形成、国民の健康の維持増進にも寄与してきた。近年、わが国の高品質な果樹生産は高く評価され、国内においては果実価格の上昇に伴い産出額も増加し、経営体あたりの所得増加につながっている。また、海外においても、生鮮果実の輸出増加に一端が示されるように、日本産果実の評価が高く、輸出品目としても高いポテンシャルを有している」。
世界的に日本の果物が高く評価されているのはいいことですが、「人口減少等を背景にした担い手や後継者の不足、気候変動に伴う高温等の影響により、果実の生産量は減少している。そのポテンシャルを十分に生かしきれず、国内外の需要に応えきれてない。そればかりか、果実価格の上昇により一部の経営体の所得が増加しても、生産量の減少は地域農業を支える流通等のインフラ衰退、ひいては地域産業の衰退につながりかねない状況である」という、厳しい状況にあります。
今後の注目ポイントは、「高品質な国産果実の強みは生かしつつ、多様な消費ニーズを捉え、手頃で日常的に摂取してもらえる生果実、果実加工品など、新たな需要に対応した取り組みを行う。また、日常的な果汁摂取を生涯にわたる食習慣として定着させるため、幼少期から国産果実に触れ、食生活にも取り入れ、果実について正しい知識を身につけてもらうよう、関係者と連携しつつ食育の取り組みを推進する」。子どもの頃から果物を食べる習慣をつけることが方針として示されました。
フルーツマエストロ協会では、子どもたちを対象にした出前授業をしています。野菜は嫌いな子が多いですが、果物はみんな好きです。去年行った、大学生約500人を対象にしたアンケート調査では、97%が果物が好き、と回答していました。子どもの頃から果物を食べるマインドを作っていくことがとても重要ですので、私たちはこうした活動を継続して行っていきたいと考えています。
◇新たな青果物輸送の仕組み
ZEROCO株式会社は、農林水産省の中小企業イノベーション創出推進事業を受託した会社です。
「冷蔵庫でも冷凍庫でもない第3の道」とありますが、果物や野菜を冷凍庫に入れると、繊維が壊れドリップが出て、生では食べられません。冷蔵庫は、常温より少し長くもちますが、劣化します。驚異的な保存効果があるのが「第3の道」です。いちごはふつう1週間ももちませんが、ZEROCOでは品種によって1ヶ月ぐらい。かたい品種では3ヶ月もつものもあります。桃は2ヶ月、メロン4ヶ月、シャインマスカット5ヶ月、りんごは1年以上。柑橘は半年ぐらいまでが限界のようです。野菜も、レタス2ヶ月半、キャベツ8ヶ月、にんじん10ヶ月以上、など、ZEROCOの中に入れておくと驚異的にもちます。
ポイントは、温度0℃、湿度100%に近いこと。生鮮食品に含まれる水分をコントロールすることで、鮮魚や花も長期保存が可能になります。
ZEROCOに入れて0℃にすることを「整う」といいます。整ったものを普通の冷凍庫に入れると、さらに長もちします。自然解凍してもドリップがほぼ出ないだけでなく、塩分を半分に減らした料理を冷凍し、解凍するとおいしくなっています。これを使えば、病院食をおいしくする可能性も十分にある、今までにない技術です。
ZEROCOはフーデックスにも出ていました。倉庫は渋谷にラボ用として10坪ぐらい、北海道の千歳に50坪、熊本に50坪あります。ZEROCOを入れたコンテナも作っているそうです。産地で予冷にZEROCOを使えば相場を見ながら出荷できますし、そのコンテナで運べばほぼ劣化しません。
輸送の2024年問題も、ZEROCOを使えば早く運ばなくてもいいので、全く関係なくなります。
JAいちかわは、ドバイの「Gulfood2025」に、ZEROCOで半年保管した梨を出展し、大人気だったそうです。東京で記者発表をしたときも、その梨が試食用としてマスコミに配られました。約1年、400日ぐらい経った梨でしたが、今年採れたものだといわれてもわからないぐらいで驚きました。
こうした新技術の開発により、今後、輸送も変わっていくのではないかと思います。
【八百屋塾2024 第12回】
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