■2019年7月21日 第4回 ナス・マンゴー 〜 勉強品目「ナス」 東京青果(株)内山桂寿氏
  • 「千両ナス」、「筑陽ナス」は、今、最もポピュラーな品種です。

  • 本日の「千両ナス」は、栃木JAはがの真岡の露地ものです。6月前後はハウスと露地の切り替え時期で、冬場、岡山から来ていた「千両」は、6〜7月に群馬、栃木、茨城に変わります。「千両ナス」はどの卸にもあるはずです。似たものもありますが、「千両」が一番おいしいといわれ、「千両」でないとダメだいう漬けもの屋さんもあります。
東京青果(株) 内山桂寿氏
  • 東京都中央卸売市場の統計では、1989年(平成元年)、ナスはキュウリ、トマトに次いで売り上げ3番目でしたが、1998年(平成10年)は4番目、2008年(平成20年)は5番目、2013年(平成25年)は6番目、昨年は9番目。流通量が減り、売れなくなっています。金額では1989年(平成元年)は180億円、去年は120億円。単価が高かったので2/3くらいですが、量は半分に減っています。その大半が千両系と筑陽系です。

  • 九州、関西では長ナスが多く、関東では中長ナスが多い。これは焼き文化と漬け文化の違いかもしれません。

  • 「筑陽」は、茨城JA常総ひかり八千代のものです。「PC筑陽」という単為結果ナスに変わりつつあり、タネが入って黒くなる障害が防げるのですが、交配したナスも入ってきますので、味はご自身で確かめて買っていただきたい、と思います。

  • 四国・九州地方は暖かいので、ナスは大きく育ち、焼きナスや炒めもので食べます。大長ナスは、初めて見る人が衝撃を受けるくらいの大きさです。熊本ではこのままアルミホイルに包んで焚火に入れて焼くと聞きました。「赤ナス」とも呼ばれる「佐土原ナス」、同様の形状で色が濃い「肥後むらさき」も焼く系で、マーボーナスなどにしてもトロッとしておいしく食べられます 。

  • 丸ナスで最も有名なのは京都の「賀茂ナス」です。奈良の「大和丸ナス」は後継者がいて、F1ではなく自家採取で栽培しています。田楽にするとおいしく、料亭で使われます。浅漬けでも食べられており、加熱しても漬けても使えます。静岡の「折戸ナス」や、長野の丸ナスなど、関西から中京地区にかけては、丸ナス文化の地域です 。

  • 大阪の「泉州水ナス」は浅漬けがおいしく、ごく浅い状態でOK。ぬか漬けも美味です。生産者さんは泉佐野市周辺に200人ほどいます。関東でもニーズが増えています。

  • 「泉州水ナス」と新潟の地のナスが交配し、やや小ぶりの「十全ナス」になりました。

  • 山形の「サファイアナス」はさらに小さく、漬けもの用です。高知の小ナスは加熱するとおいしいといいます。東北の小ナスは皮がやわらかいので、漬けもの向きです。

  • 米ナスは名前の通り最初アメリカから入ったナスで、緑色のヘタが特徴です。日本での栽培も増え、高知、千葉、秋田などから一年中入ります。皮がかたいので漬けものには向かず、焼く、炒めるといった加熱調理がおすすめです。ナスは英語で「エッグプラント」といいますが、アメリカでは紫色よりも白が主流の色のようです。

  • 京都の篠ファームさんでは、「ゼブラ」「スティックテイスト」「ピッツァナス」など、ヨーロッパ系のナスを各種栽培しています。基本的に加熱して使う品種です。

  • ナスを買ったかたに聞くと、漬けるよりも、マーボーナスなどに料理するほうが増えているようです。ナスの漬けものは、白菜やキュウリに比べてむずかしいのかもしれません。そういう意味で、長ナスや大長ナスが売れるようになっているのかな、と思います。

  • 5月にカゴメさんが発表した調査によると、子供の苦手な野菜1位は5年連続ナス。これを払拭するために八百屋さんもご協力ください。ナスは種類が豊富で、いろいろチャレンジできる野菜です。これからが旬なので、どんどん売っていただきたいと思います。

  • 梅雨時期は店持ちも悪かったのですが、ようやく気温が上がってきました。30℃を超えると生育スピードが上がり、出荷量も増えます。ヘタ下が白いナスも増えると思います。これは夜中に伸びた分で、やわらかくておいしい証拠です。
◇「ナス」の写真
千両ナス
(栃木)
筑陽
(茨城)
大長ナス
(熊本)
佐土原ナス
(熊本)
ひごむらさき
(熊本)
京山科ナス
(京都)
賀茂ナス
(京都)
丸ナス
(奈良)
折戸ナス
(静岡)
泉州水ナス
(大阪)
十全ナス
(新潟・JA小国)
十全ナス
(新潟・土田重兵衛)
中島巾着
(新潟・土田重兵衛)
寺島ナス
(東京)
式部
(山形・庄内)
サファイヤナス
(山形)
米ナス
(高知)
白ナス
(茨城)
ひもナス
トロまる
(群馬)
狩留家ナス
(広島)
スティックテイスト
(京都・篠ファーム)
ピッツァナス
(京都・篠ファーム)
京しずく
(京都・篠ファーム)
◇「マンゴー」の写真
アップルマンゴー
(メキシコ)
アップルマンゴー
(沖縄)
アップルマンゴー
(宮古島)
アップルマンゴー
(宮崎)
アップルマンゴー
(台湾)
ペリカンマンゴー
(フィリピン)
マハチャノマンゴー
(タイ)
ミニマンゴー
(宮古島)
 

【八百屋塾2019 第4回】 挨拶講演「ナスについて〜在来種からF1種への流れと今後の方向性」勉強品目「ナス」「マンゴー」食べくらべ