■2020年2月16日 第11回 モヤシ・キンカン 〜 講演「モヤシ」について 成田食品(株)代表取締役社長 佐藤信一郎氏
◇成田食品(株)について
  • 成田食品(株)は創業69年。全農福島を介し系統販売を行い、51年目です。

  • 本社工場は福島県相馬市、栃木県の真岡と岐阜県の大垣に工場があります。

  • モヤシを中心に、炒め野菜、サラダの三本柱で、北は青森から南は神戸まで、365日、商品を供給しています。

  • モヤシは暗室で水をかけて豆の栄養だけで育てる野菜です。創業当時、祖父は農業をしており、冬場に、残っていた防空壕の中で、樽に豆を入れ、水をかけて作ったのが「成田もやし」の始まりです。今でもお客さまにお見せすることがあります。

成田食品(株) 代表取締役社長 
佐藤信一郎氏
◇モヤシの特徴と来歴
  • 穀物から芽を出たものはすべて「モヤシ」と呼ばれます。現在出回っている95%は緑豆モヤシ、残りはブラックマッペ(黒豆)、大豆モヤシです。

  • 約30年前、成田食品は、大豆モヤシに対抗して、ブラックマッペを原料に、豆がついていない「くろっぺ」を発売しました。また、虹のマークがついた「ベストモヤシ」は平成元(1989)年に発売した国内初の緑豆モヤシとされます。

  • ブラックマッペはミャンマー産です。大豆モヤシはメーカーによって、アメリカ産、カナダ産、中国産など。成田食品は中国、黒竜江省のものを使っています。

  • 昔、ときどき袋に黒い豆殻が入っていたのがブラックマッペです。あるとき、ブラックマッペがうまくモヤシにならないことがあり、成田食品の創業者が緑豆の「ベストモヤシ」を開発し、それ以降、全国的にブラックマッペが緑豆に変わっていきました。
◇モヤシの種子について
  • 緑豆は、タイ、ミャンマー、オーストラリアなどで作られていますが、国内の約90%は中国産の緑豆を使っていると思います。成田食品は100%中国産です。

  • 緑豆は5月に播種をして10月にタネが採れます。国内のモヤシの原料は、緑豆、ブラックマッペ、大豆を合わせると6万トンが日本に入ってきますが、約95%が緑豆です。成田食品は6万トンのうちの1万トンを使っています。

  • 豆は、年1回の収穫なので、万一、不作や確保できないことになると1年間モヤシが作れなくなります。そこで成田食品では、毎年3割ほど多めに原料を確保します。10月頃のタネの収穫後、12月には契約を完了し、20年以上、どこよりも先にいいものを、数をそろえています。2月現在、すでに3工場の倉庫に原料が入っています。
◇モヤシの育成
  • モヤシは、豆の栄養と水だけで、光を当てずに温度管理をすれば1週間くらいでできますが、成田食品では酸素濃度などを調節しながら約10日間かけて抑制してゆっくり育てて、日持ちするモヤシを作っています。

  • 豆殻が残っているものは、豆の栄養が根にまでいっていないからです。しっかりしたものを作れば、殻は自然に取れます。

  • 「根取りモヤシ」、「根切りモヤシ」という商品がありますが、洗浄すれば根や頭についている殻は自然に取れます。

  • 成田食品では創業当時から漂白はしていませんが、「無漂白」と表示すると、「今までは漂白していたの?」と思う方がいるので、15年ほど前に表示を外し、「自然な白さ」というキャッチコピーで売っています。

  • モヤシをよく見ていただくと、縦に筋が入っていることがあります。これは、発芽させる前の殺菌工程でお湯を使うためです。日本で認められている殺菌方法は塩素かお湯で、できるだけ塩素を使わずに作りたいという創業者の考えで、お湯で殺菌しています。モヤシにうっすらと茶色い筋が見えることがありますが、お湯による殺菌のためです。
◇いいモヤシは原料と水で決まる
  • 緑豆、大豆、ブラックマッペは、商社を通さず、直接現地のサプライヤーから買っています。

  • モヤシを決めるのは、原料6割、水4割といい、原料は重要です。農作物なので年によるよしあしがありますから、現地のサプライヤー7〜8社と契約しています。豆を作っている場所は内モンゴルの近く、吉林省から北に700キロ、車で6時間くらいのところです。毎年豆ができたら、サプライヤーから200検体を取り寄せてテーブルテストをします。よい豆があれば、そのエリアのものを集めて、畑の検査や、発芽するかどうか、カビ菌の検査などを行い、合格したものだけをサプライヤーが買い集めて、さらに選別します。

  • 産地からの輸送はトラックをチャーターして大連港まで運んでいます。港では積み荷を厳格に管理し、濡れていないか、油がついていないかなどを確認してから日本に運びます。成田食品のチェックの厳しさをわかってもらうため、たとえば量が不足していれば返品します。こうしたことを20年くらい続け、今ではコミュニケーションもとれて、安定してよいものが入ってきます。
◇パッケージについて
  • モヤシは種類によって呼吸量が違います。大豆モヤシは、呼吸量が緑豆モヤシの4倍といわれ、緑豆のフィルムに入れると窒息して腐敗しやすくなります。

  • 使いきれず残ったモヤシは袋に戻し、口をきつく結んで冷蔵庫で保存します。水にはさらさないでください。

  • モヤシは生きているので、蛍光灯の下に30分くらい置いておくと葉が緑色になります。
◇モヤシの残さ
  • 成田食品では1日3工場で約320〜340トンのモヤシを、365日生産しています。殻や根、折れて商品にならない残さは、15〜18%くらい、3工場合わせて約60トン出ます。これは粉砕して水分量を減らし、牛の飼料として買っていただいています。

  • 震災当時、稲わらが放射能に汚染され飼料不足が問題になりました。そのとき、工場で作っているモヤシは安心ということで、残さのオーダーが増えました。

  • 肉牛ではなく乳牛の飼料です。ビールの搾りかすのビート入りとか、水分60%といった牧場主からのリクエストにも合わせています。
◇成田食品(株)の商品について
  • 成田食品の中心となる商品は、「成田モヤシ」、「ベストモヤシ」をはじめとした緑豆モヤシ、ブラックマッペの「くろっぺ」、小大豆モヤシの「豆どん」など。それぞれ業務用もあります。「豆どん」は今年、機能性表示を取ったばかりの商品です。

  • 2番目の主軸は炒め野菜。このほか、サラダ用カット野菜もあります。炒め野菜とサラダ野菜は同じ「カット野菜」ですが、成田食品では「モヤシ」、「炒め野菜」、「生食」とカテゴリーを分けています。モヤシは、かつてヨーロッパで食中毒が発生したため、生食は禁止されています。加熱調理用と生食用は安全性のレベルが違いますから、成田食品では工場も分けています。
◇質疑応答より

    Q:モヤシの賞味期限はどれくらいですか?
    A:賞味期限はメーカーがおいしく食べられると定めた期間で、消費期限はメーカーが安全を担保できる期間です(科学的根拠が必要)。成田食品の商品には、出荷から3日の消費期限がついています。モヤシは野菜なので法律上は必要ありませんが、消費者の安心のために消費期限を入れています。ただし、流通によっても日持ちは変わります。

    Q:市場流通のモヤシは消費期限を表示していますか?
    A:表示、非表示は半々ぐらい。給食、納めなどで日付が必要な場合は、担当者に言っていただければ消費期限を入れられますし、不要であれば入れないようにもできます。

    Q:モヤシのパッケージには、真空とそうでないものがありますが、その違いは?
    A:モヤシはかつて樽で輸送しており、その後、輪ゴムで止めた大きな袋になりました。個包装になったのは37、8年前です。このとき真空包装にしたメーカーがあり、特に関西では、モヤシは真空包装というイメージがあります。モヤシは呼吸しているので、真空包装はよくありませんが、成田食品でも主に関西圏に出荷する岐阜工場では強めに脱気するなど、地域によって変えています。袋に多少膨らみがあるほうが輸送時に折れたりしないので、これを安定した温度で運んでいただくのが一番です。

    Q:水が重要とのことですが、どんな水を使っているのですか?
    A:地下水です。モヤシ1袋に20リットルくらいの水が必要で、1工場7000トン、飲料メーカーより多くの水を使います。岐阜工場は地下80メートル、栃木は地下120メートルから、山のてっぺんにある福島の本社工場は、岩盤を2枚抜いた地下250メートルから水を引いています。いまも放射能検査を続けていますが出たことはありません。水は品質と安定した量が必要なので、新しい工場の建設はまず水探しから始めます。

    Q:モヤシのおいしい食べ方を教えてください。
    A:モヤシと豚肉をミルフィーユ状態にして、夏はせいろ蒸し、冬は鍋にして、ポン酢でめしあがると、簡単でたくさん食べられます。健康的でダイエットにもいいと思います。

    Q:モヤシを食べるのは日本だけですか?
    A:世界的に食べられています。アジア圏以外ではスプラウトのほうが多いのですが、ヨーロッパで緑豆モヤシを作っているところもあります。

 

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