■2019年9月8日 第6回 ウリ類・ブドウ 〜 講演「残暑はつづくよ。まだ間に合う夏の味覚ウリの話」 元野菜ソムリエコミュニティかながわ幹事 石田友一氏
◇台木として使われるトウガン
  • トウガンは「冬瓜」と書きます。瓜という字がつく野菜は、西瓜(スイカ)、南瓜(カボチャ)、胡瓜(キュウリ)などかあります。トウガンの名前の由来は諸説ありますが、冬まで保存できるウリ、という説が有力です。

  • いろいろな種苗会社がトウガンを扱っていますが、市場規模は約4000万円です。億単位のメロンやカボチャに比べマーケットが小さく、新品種開発には5〜10年かかりますから、割に合いません。そのため品種が少ないのですが、病気に強いことや、保存性がよいことも、新品種が出ない理由だと考えられます。
元野菜ソムリエコミュニティかながわ幹事
石田友一氏
  • トウガンは食べるよりも、スイカの台木として最もよく使われます。連作障害が出にくいように、トウガンの根に、スイカを接ぎ木して栽培します。トウガンのほか、ユウガオやカボチャなども台木になります。この面でのトウガンの育種は進んでいます。

  • 三浦半島の姫トウガン、栃木の丸いタイプのトウガン、長いタイプのトウガンのタネを持ってきました。姫トウガンのタネはかなり細かいです。のちほどご覧ください。
◇原産地や来歴
  • トウガンの原産地はインドです。3世紀頃にインドから中国に伝わり、日本には5世紀頃伝来したとされます。トウガンが伝わっていく時期と経路は、仏教の広まりとほぼ重なっています。おそらく、仏教徒が中国から日本へ旅したとき、トウガンもいっしょに動いたのでしょう。トウガンは保存性がよく、土の影響を受けにくいので、栽培しては移動することができます。水分補給や食料として必要な野菜だった、と考えられます。

  • 日本には、南方からと朝鮮半島からの2つのルートで伝来しました。南の産地ほど実が大きく、北に行くほど小さくなります。

  • タネは中国、ミャンマーなどで採種しており、日本では一切採種していません。

  • タイ、ミャンマー、インドネシアなど仏教国ではトウガンの料理がポピュラーです。
◇栽培方法について
  • かつて、トウガンは3〜5キロが主流でしたが、大きすぎて家庭では使いにくい。そこで登場したのが、1.5〜2キロの、家庭菜園でも産地でも扱いやすい姫トウガンです。タキイ種苗さんが、病気に強く安定したものを選抜しました。

  • トウガンは高温性の植物です。発芽温度は25℃以上と、一般的な野菜よりもかなり高く、栽培期間中15℃以下になると生育が著しく悪くなります。今年は3〜5月に天候不順が続き、花数が減る、初期肥大性が悪い、などのことから収穫が少なくなりました。トウガンにはトンネル栽培やハウス栽培で気温15℃以上に保つ管理が必要です。

  • 交配後、小玉では25〜30日、大玉は40〜45日で収穫可能になります。樹の状態によって変わりますが、基本は「子ヅル4本仕立て」です。子ヅルを4本残し、各ツルに2つ着果させ、1本あたり8果実採ります。

  • 交配は主にハチか人工受粉。何もしない方もいますが、果実が乱れたり、低温の時期に花粉が出ず、しっかりと受粉できなくていいものがならないことも多く、農家さんには、「ハチがいなければ、必ず手で受粉してください」とお願いしました。
◇現在の状況と今後
  • トウガンの作付面積は220ヘクタール。カボチャは15,800ヘクタール、減少傾向のメロンでも6,500ヘクタールですので、かなり小さいことがわかります。

  • 産地ランキングは、沖縄県、愛知県、岡山県、神奈川県。この4県で60%以上をまかなっています。沖縄県と岡山県は4〜6キロの大きなトウガン、愛知県は3〜4キロ、神奈川県はJA三浦市で小さめのトウガンを作っています。

  • 私は愛知県出身で、小さい頃から家庭菜園で作ったトウガンを食べていました。食べ方は、煮物やスープの具など。和風料理のわき役として使われます。煮るとやわらかく、トウガン自体に味はほとんどなくてどんな味にも染まるのがいいところです。関東の特に若い世代はあまり食べた経験がなく、調理方法も知らないのではないでしょうか。重量当たりの単価が安いので、飲食店、学校給食、加工業務などでは比較的使われやすく、まだこれから面白い伝え方ができる野菜です。

  • 保存は、丸ごとのトウガンを風通しがいい10℃前後の冷暗所で保存するのがベストです。切るとそこから鮮度が落ちるので、その場合は冷凍保存するといいでしょう。

  • 一般家庭で使ってもらうためには、トウガン復活作戦が必要です。若者に認知させるにはインスタなどSNSで、たとえば「トウガン・カービング」を広める。彫刻刀でトウガンを細工した作品です。トウガンは皮が厚いので、カービングしたものをスープの器に使えます。

  • 私には1歳4ヶ月の娘がいます。トウガンは赤ちゃんにも食べやすく、離乳食に向く野菜ですが、妻は、トウガンは重くて持ち帰れないと言います。ニンジン3本程度の重さ(300〜500グラム)ならいいそうです。ということは、1.5キロ玉トウガンの1/4カット。皮むきサービスをつけると、離乳食などもっと幅広い使い方ができると思います。10分もあれば煮えますから、ニンジンやカボチャより使いやすい野菜です。

  • 今後、海外からの労働者は間違いなく増えます。食に関しても、中華、洋風、エスニックなどが増えるでしょう。タイ料理の「ソムタム」というパパイヤのサラダにトウガンを使うなど、トウガンをリセールするチャンスです。輸入品も多くなると思いますが、ぜひ国産のトウガンをすすめてください。
◇質疑応答より

    Q:居酒屋さんにすすめられる簡単でおいしいトウガン料理を教えてください。
    A:キュウリの浅漬けのように、トウガンを浅漬けにすると意外においしい。薄いとシャキシャキ、厚いと弾力のある食感というように、切る厚さによって食感が変わります。

    Q:トウガンの皮は料理できますか?
    A:皮はかたくて青臭いので食べられません。

    Q:畑で見たトウガンにはトゲがありました。農家の方は取って出荷しているのですか?
    A:出荷段階で農家さんがゴム手袋をしてきれいにしています。トゲを取っても鮮度的にはまったく問題ありません。トゲがあると虫が寄りにくくなります。

    Q:ユウガオにもトゲがあるのですか?
    A:トウガンとユウガオは違う系統なので、トゲはありません。

    Q:夏場の東北のキュウリが短いのはなぜですか?
    A:品種だと思います。東北地方で寒い日が多いと短くなります。規格に合わせることを考え、状況に応じて、長くなるものを短く作るか、短いタイプを長く作るという方法があり、すぐれた農家さんはどちらにも対応できるように両方の品種を作ります。

 

【八百屋塾2019 第6回】 挨拶講演「残暑はつづくよ。まだ間に合う夏の味覚ウリの話」勉強品目「ウリ類」「ブドウ」商品説明食べくらべ