■2023年10月15日 第7回 れんこん・香酸柑橘 〜 産地リモート中継「広島のレモン」 広島組合副理事長 橋本佳樹氏、中本農園 中本氏
◇「広島のレモン」について
広島組合副理事長 橋本佳樹氏、中本農園 中本氏より]
  • 栽培を始めてから5年半ですが、面積が小さく木も若いため、出荷量も少ないという状況です。

  • 広島は日本一レモンが作りやすいと考えています。1つは立地条件です。北は中国山地、南は四国山地に囲まれており、台風や冬の寒波などを防いでくれる。瀬戸内海の島々には、たくさんのレモン産地が点在しています。傾斜地で、昔から、みかんのおいしいところが多い。採れるレモンは、他産地より糖度が高い、と聞いています。収穫後の農薬(ポストハーベスト)はもちろん、収穫前の腐敗防止剤、除草剤も使用していません。産地一丸となってそうした取り組みを行っています。

  • 広島レモンの弱点の1つは、夏にかん水できる水源がない産地が多く、夏場に果実の肥大が悪く、収量が不安定になることです。そこで、当園では水田を転換して、50センチぐらいの高畝を作り、畝の間にパイプを通して水はけをよくし、通気性を向上させて、梅雨時期に芽が傷まないようにしています。梅雨が明けたらかん水をしっかりやり、雨が降らないときは10日に1回はかん水しています。

  • 有機質資材にこだわり、米ぬか、自家製たい肥、山野草を入れたものを3年間堆積して、土に戻しています。

  • 奥まで軽トラが入り、横移動しながら一輪車ですべての作業ができるように園内道を整備しています。

  • 温暖化により、春が早く、夏が猛暑になっています。7月の中旬ぐらいまで、果実の生理落下反応がひどくならないように祈っています。今年、広島県では梅雨明け後ほとんど雨が降らなかったので、生産安定に響くのではないかと心配です。温暖化は台風や寒波などにも影響があると聞いています。台風の雨風でレモンが傷つくと、かいよう病という非常に怖い病気にかかって商品価値がなくなるので、大雨や強風がないことを祈っています。

  • 高齢化、リタイアで放置された柑橘園が病害虫の発生源となることもあり、今後、心配されます。

  • 畑の周りを囲う鉄柵と2重ネットでイノシシの侵入を防いでいます。イノシシはのり面を崩したり、マダニの発生源になることもあります。対策として、今年から、木と木の間を広くし、光を十分に入れて、病気や害虫が発生しても、少ない農薬で満遍なく散布できるようにしています。また、木を低くして、作業を楽にすることも進めています。現在、小屋の基礎工事が始まりました。すべての農業機械、農業資材を小屋に集めて、作業の合理化、効率化をはかりたいと考えています。

  • 「リスボン」を間引き、当初90本あった木が67本まで減りました。2年ほどで元の収量に戻ると思いますが、今年は、間伐の影響で2〜3割収量が下がると思います。ただし、品質は上がっており、そこでカバーしたいと考えています。

  • 当初の90本の6割に広島県の基幹品種、石田系「リスボン」を使い、安定生産を目指しています。寒さに強く、多収が特徴です。残りの4割で、露地は難しいとされる「ユーレカ」にチャレンジしています。品質は最高で、香りも味もいいのですが、寒さに弱く、露地で作る人はほぼいません。生産は不安定ですが、将来は、安定している木を選び、不安定な木に替えて、安定できるようにしたい。もう1種類の広島県基幹品種「ビアフランカ」は2本のみ。以上3品種を導入しています。

  • 消費者のみなさんに届けるためには、カビや腐りが出ないこと、病気の果実を出さない工夫をしています。カビの発生源は土なので、園内にはシートを張り、その上に水をはじく紙を敷いて、収穫用のコンテナを置いています。コンテナの中にはクッションを入れ、使い終わったら、洗剤で洗い、乾燥させてから翌年の収穫を迎えます。クッションは、黒く腐る病気を防ぐためです。後半に貯蔵したレモンに、年明けに出てくることがあります。これを出さないためには果実の衝撃を防ぐこと。選果台の上にも毛布やクッションを置いています。県の先生によると、「果実を動かしたときにレモンの香りがするようではいけない」とのこと。香りがするような作業には必ず衝撃があり、後から腐ってくる、と。当園では、収穫・移動のときに香りがしない作業を周知徹底しています。

  • 広島県内でのレモン栽培面積は約300ヘクタール、私どもの産地は15ヘクタールほどですが、農家は2極化しています。1つは、当園のように、高齢化した農家が、規模を大きくせずに、きめ細かく管理しながら、楽にできる工夫をしつつやっていく。もう一つは県やJA等が推進する大規模法人で、5〜10ヘクタールの団地にレモンを入れ、多収を目指す。将来的には零細農家はなくなるもしれませんが、きめ細かく管理し、末長く続けられるような工夫をして、お取引を続けていただきたいと思っています。企業的な大規模農家さんにも、産地を盛り上げてくださっている方がいますので、そうした方の夢のあるお話もお聞きいただければ幸いです。