■2014年6月15日 第3回 トマト・ハウスみかん 〜 勉強品目「トマト」について 東京青果(株)長掛雄治氏
◇勉強品目「トマト」
  • トマトはアンデス山脈の山奥、肥料分が少なく、ゴツゴツした地域が原産です。マイクロトマトが原種のトマトに近い形状をしています。ただ、原種のトマトはすっぱくておいしいものではありません。そのトマトがヨーロッパに伝わり、アメリカを経由して日本に入ってきたのが江戸時代の中頃で、当時は観賞用でした。

  • 日本に食用としてトマトが導入されたのは、第二次世界大戦後です。アメリカ軍がサラダを食べたいということで、レタスなどとともにトマトも入ってきました。そのとき入ってきたのが、ピンク系のポンテローザ種というトマトです。これが日本のトマトの品種のもとになっています。
東京青果(株) 長掛雄治氏
  • トマトにはレッド系とピンク系があり、目安としては、表面の薄い皮をはがすと黄色く透けるのがレッド系、といわれています。ミニトマトにも一部ピンク系のものがあります。

  • 5月末頃からスタートし、いまの時期に出回っているトマトは、2月にハウスでタネまきをしたものです。1か月間苗を育て、それを畑に定植するのが主体で、直まきのトマトはほとんどありません。

  • 3〜4月定植で、7月末まで採ると7〜8段になります。熊本や愛知などで栽培されている冬からいま頃まであるトマトは、23〜24段収穫できます。生産者の方の技術のたまもので、こうした技術がなぜ発達してきたかというと、トマトが売れるからだと思います。

  • 1977年(昭和52年)〜1978年(昭和53年)頃、桃太郎が出てきました。それまでのトマトは大玉で収量はとれたのですが、一部に10円玉大ぐらいの赤い色がついたら収穫し、輸送して店に着く頃に色づきました。桃太郎が出て、赤くなってから収穫するようになりました。収量は悪かったのですが、おいしかったため、みんなが桃太郎に切り替えて、いまのような流れになったわけです。桃太郎に切り替わったとき、トマトの生産量は3割ほど減少しました。その後、また収量が増えて、東京卸売市場には8万6000トンも入っています。

  • タキイの桃太郎に負けるなということで、他社からも各種のトマトが出ています。

  • 北海道、平取は、函館に近いところで、面積も広く、日本を代表するトマトの産地です。品種は、「桃太郎エイト」が中心。5月頭ぐらいから10〜11月頭くらいまで出続けます。

  • 栃木県のJA足利市は、サカタの「麗容」が中心で、2月〜8月頭ぐらいまで出荷されます。赤くなってもやわらかくなりにくいのが特徴です。

  • 「ファースト」は1月末から出て、いまの時期でほぼ終了します。桃太郎系が出る前に一世を風靡したトマトで、先端が尖っていて、ねっとりとした味わいが特徴です。水分を絞ると糖度をのせやすく、縞が縦にきれいに出ます。温度が高くなるとすぐやわらかくなるので、昔は日本の各地で作られていたのが、あまり作られなくなりました。東京の市場に入ってくるのは、愛知県と茨城県の竜ヶ崎市ぐらいで、東京でも多摩の一部で露地栽培されていますが、市場にはほとんど出回りません。

  • 愛知県豊橋のミニトマトは、水を絞って作っている高糖度系ミニトマトです。

  • 「アイコ」は、いまから8年ほど前に出てきた砲弾型のミニトマトです。これから、北海道などからも出てきますが、糖度12〜13度と非常に甘く、おすすめです。

  • 「サンドリップ」も甘い品種です。

  • 紫色のトマトは、「トスカーナ・バイオレット」というパイオニアエコサイエンスの品種。この会社では、オレンジの「ピッコラカナリア」や、調理用の「シシリアンルージュ」なども作っています。

  • 今日持ってきたホワイトのトマトは、ちょっと色がついていますが、もっと真っ白に近いものを作っている人もいます。

  • ブラックのトマトは、黒というよりは濃い茶色に近い。

  • グリーンのトマトは、熟してもグリーンのままで、甘くなりません。

  • 「千果(チカ)」は赤いミニトマトの代表品種のひとつで、そのオレンジ版が「オレンジ千果」です。赤いミニトマトは、「小鈴」。「イエローアイコ」は、「アイコ」の黄色版です。どちらも九州、長崎と熊本産で、干拓地で作っているトマトは水分が絞れていておいしいと思います。

  • フルーツトマトのなかで、「塩トマト」は、水をまくときに塩を入れて栽培する方法と、 干拓地の海側で栽培する方法があります。塩分によってトマトに生育障害が起き、ミネラル分を吸収して、小さく、濃縮されたトマトになります。フルーツトマトのもうひとつの流れが、「アメーラ」のように、畑のなかで水分を完全にカットする方法です。「匠」は、露地で水分をきって栽培し、味の濃いものを選抜しています。

  • ミディトマトの「華クイン」、「フルティカ」は、佐賀県の唐津市で栽培しています。果皮がやわらかく、甘いトマトです。「華クイン」や「華こまち」は福井の会社が品種の生産元で、一口で食べられるのと、普通のトマトよりよく採れるのが特徴です。

  • 「シンディスイート」は、サカタの品種です。

  • 山形の「カンパリ」は房つきのトマトです。普通は粒が落ちてしまったり、全体をきれいな形の房にするのは大変なのですが、赤みのバランスを調節しつつ、見事な房にして出荷されています。これから味がのってくる時期です。

  • 日本ではトマトの8〜9割が生食されますが、加熱調理用のトマトを鍋料理に使ったり、カットして炒めてパスタに和えると、非常においしい。生でも食べられる調理用トマトもありますが、やはり加熱したほうがいいと思います。

  • マイクロトマトは、時期によっては価格が高くなります。

  • 高糖度トマトの基準は、8度以上が目安とされます。12〜13度までいくと収量が上がらなくなり、15〜16度になるとほぼ幻といっていいでしょう。

  • 抑制と夏秋の違いは、夏秋は5〜6月に出荷が始まります。抑制はその後、8月ぐらいからスタートします。

  • 夏場は酸味の強いトマトが好まれます。あまり出回っていませんが、「マイロック」は酸味が強いトマトです。

  • 夏から9月頃にかけての暑い時期に、高温障害で赤くなっていない部分があるトマトが出ます。中身や味は変わらないので、お客さまに説明してください。

  • 北海道から九州まで、すべてのトマトが揃うのは1年のうちでこの時期だけです。おいしくて価格も安いので、この時期にぜひトマトをたくさん売ってください。

  • サカタの「りんか409」は、一昨年ぐらいから出始めたトマトで、赤みがよく、味もいいので、九州、北海道などで主流になりつつあります。

  • 「王様トマト」はサカタのブランドのひとつです。

  • 高糖度トマトは、赤くなる前に水を絞っているので、糖度は緑でも赤でも同じです。
◇トマトの写真
桃太郎エイト
(北海道)
麗容
(栃木県)
ファースト
(茨城県)
イエローキャロル
(長崎県)
スノーホワイト
(熊本県)
パープルバイオレット
(熊本県)
みどりちゃん
アイコ
(愛知県)
アメーラ
(静岡県)
スーパーフルーツトマト
(茨城県)

(愛知県)
カンパリ
(山形県)
フルティカ
(佐賀県)
華クイン
(佐賀県)
シシリアンルージュ
(青森県)
ボンジョルノ
(愛知県)
青トマト
マイクロトマト
リーフトマト
◇補足説明 〜 (株)果菜里屋 高橋芳江氏
  • 今日は、雑誌『うかたま』でも紹介されたことがある越谷の生産者が作ったトマトを持ってきました。先日、越谷に行ってきたのですが、通常は1本のとところ3本立てにして、土を耕さずそのまま植えているそうです。水は、利根川の地下水を利用している、と聞きました。品種は「桃太郎はるか」です。水分を絞り込んであるので皮がややかたいのですが、直売所に出したら大人気で、みなさん行列して買って行かれるそうです。今年はもうほとんど終わりで、また来年、買ってみたいと思っています。
(株)果菜里屋 高橋芳江氏
越谷「トマト園芸」のトマト各種
 
■2014年6月15日 第3回 トマト・ハウスみかん 〜 勉強品目「ハウスみかん」について 橋本幾男氏
◇勉強品目「ハウスみかん」
  • 今日はお中元に向けて、ハウスみかん各種を持ってきました。佐賀の松浦東部、島原南、みはま、蒲郡、きつきなど、東一に入っているほとんどの銘柄が揃っています。

  • 松浦東部は極早生の上野で、ほかは宮川です。今年はきつきのみかんがすごくいいと思います。島原南はLですが、意外と味がいい。うちの店では化粧箱で出しています。松浦東部はやや味が薄いですが、おいしい。これからは、みはまがよくなると思います。
橋本幾男氏
  • 愛媛中央は伊予園で、昔はここのみかんもよかったのですが、最近減っています。徳島の阿南なども昔は多かったのに、いまはほとんど出てきません。ハウスみかんは、最盛期に6万トンあったのが、いま、1万7000〜8000トンに減少しています。相場は当時とあまり変わらないので、生産者が年々減ってしまっています。

  • ハウスみかんは、冷蔵庫に入れてはいけません。冷凍ケースの前あたりに1週間ほどおくと、色が出てすごくよくなります。

  • ほかの果物については、今年はりんごがあまりよくありません。ジョナは比較的大丈夫ですが、なるべく小玉を売るようにするほうがいいと思います。

  • さくらんぼは、反射板を使っているものは熟度が来る前に色がついてしまいます。これから出てくる「紅秀峰」は、実がしまっていておいしい。うちの店では、いま、「レーニア」を扱っています。特にワシントンのものがおすすめです。ただ、SからLまでいっしょに入っているので、きれいに詰め直すといい。これから出てくるワシントンの黄色い箱で農園主のおじいさんの写真が入っているものは特においしいと思います。

  • 先日、市場で沖縄のマンゴーとパインを試食しました。「ハワイ」と、おそらく「ボゴール」という小さいパインがおいしかったのですが、カットして売るにはサイズが小さいものは、なかなか難しいかもしれません。

  • 今年の岡山のアレキ、シャインもおいしい。ただ、かなり高額になるので、ギフト用にするといいと思います。

◇ハウスみかんの写真など
ハウスみかん
(愛媛県)
ハウスみかん・みはまっこ
(愛知県)
ハウスみかん
(愛知県)
ハウスみかん
(宮崎県)
ハウスみかん
(佐賀県)
ハウスみかん
(長崎県・島原雲仙)
   
 
 

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