■2013年6月16日 第3回 〜 講演「しょうがについて」 高知県園芸連 東京事務所 所長 平山智雄氏
◇高知県の農業
  • 高知県では、高齢化などで農家が減少しています。高知県の人口は、2005年に80万人でしたが、30年後には20万人ぐらい減るのではないかと予想されています。農業就業人口も、2010年には約3万4千人の56%が65歳以上と、高齢化しています。

  • 年間50万円以上収入がある方は、この10年で約25%減、1万2千人ぐらい減ったとされています。
高知県園芸連 東京事務所 所長 平山智雄氏
  • 高知県では、野菜ではハウス栽培から露地まで、110品目。果物は40品目、花は118品目と、多種多様な産物があるのが特徴で、北海道から九州まで全国84社の青果関係の会社等とお付き合いしています。

  • しょうがの生産・出荷は、高知県が全国でナンバーワン。主に、大しょうがとハウスの新しょうがを栽培しています。しょうが以外にも、高知県は、ニラ、ゆず、シシトウ、ナス、ミョウガ、土佐文旦などが全国ナンバーワンの出荷を誇っています。
◇しょうがの歴史
  • しょうがは紀元前3世紀ごろからあったといわれています。

  • 原産地は、インドからマレー半島にかけてのアジア南部だといわれ、中国に伝わって主に薬として栽培されていました。日本でも、江戸時代に中国から伝わり、薬として使われていたようです。

  • 高知では、今から145年前、1868年に栽培が始まったという記録が残っています。

  • ハウス栽培の新しょうがは歴史が浅く、45年前に、農家さんが囲いを作ったりして、露地ではない栽培方法を始めたのがきっかけのようです。
◇しょうがの種類
  • しょうがには、根しょうが、葉しょうが、矢しょうががあります。

  • 根しょうがは、主として、すって食べます。高知では、従来から「土佐1号」という品種を栽培していますが、辛みの強いものなどを個人で選抜して新しい名前を付けて出荷をしている方もいます。 「オガワウマレ」、「黄金虚空蔵」といった商品も根しょうがです。

  • 根しょうがは、すったら繊維が残りますが、新しょうがは水になってしまいます。

  • 葉しょうがは小指大で、葉がついたまま収穫します。「谷中しょうが」は、葉しょうがのひとつです。

  • 矢しょうがは、軟化栽培で15cmほど成長したところで太陽に当てて収穫します。

  • 中国産のしょうがは、色が黄色くて辛みが強いのが特徴です。
◇高知のしょうがの特徴と見分け方
  • 高知のしょうがは、比較的辛みが少なく、香りがいいのが特徴です。

  • 国産のしょうがを見分けるには、すったあとに酢をかけて置いておくと、高知のしょうがをはじめ、国産のものはピンク色に変わります。
◇しょうがの栽培
  • 収穫したしょうがの40〜50%ぐらいは種イモとして使います。次年度にいかにいいものを残すかというところも農家さんの苦労のひとつだと思います。

  • 露地のしょうがは、4月頃に定植します。まず、畑に肥料などを入れ、芽が出る部分を上にした種イモを間をあけて植えつけていきます。収穫するのは11月です。

  • しょうがは非常に病気に弱いので、栽培する前に土壌消毒をしています。山間部の場合、山から流れてきた水が病気に汚染されていると、しょうがが全滅することもあります。

  • 3つの畑を持っている農家さんは、トラクターを3台使います。最初の圃場に使ったトラクターは、次の圃場には使わないそうです。圃場に入るときには長靴を変える。視察に来た人も、周囲から見てもらうだけで、絶対に圃場にはいれない。そこまで気を遣わないといけないぐらい、しょうがは病気に弱い作物です。

  • 高知は7〜8月に台風が多いので、しょうがの細い茎を守るために畑いっぱいにネットを張り、折れないように支えます。茎が折れてしまうと、次に芽が出てくるまで時間がかかります。

  • しょうがは、雨が降らないと太らず、枯れてしまいます。それを防ぐために敷き藁をして、土が乾かないようにしています。敷き藁には、雑草が生えるのを防ぐ、という効果もあります。

  • しょうがが大きくなってくると、土の上に顔を出すことがあるので、土を寄せる作業もします。植えっぱなしではいいものはできません。

  • 今、高知県では、エコシステム栽培や国の特別栽培などをすすめています。しょうがに関しては、消毒をできるだけ減らすため、フェロモントラップといって、フェロモンで親の蛾を集めて駆除する方法や、夜に黄色い蛍光灯をつけて虫を集めて駆除するといったことをしています。一番新しい方法としては、微生物を使用した防除もあります。

  • しょうがは土の中にあるので、収穫には相当な力がいります。そこで、今は、機械で収穫しています。まず、茎の上の部分を1m50cmぐらい残して刈り取り、茎を機械で持ち上げます。1反あたり20〜30人の人を雇って、それをハサミで切り、1個ずつ、ビニールを敷きこんだコンテナに入れていきます。

  • 収穫したしょうがは、かつては、山の斜面に穴を開けて、洞の中に貯蔵していました。今は予冷庫で貯蔵しています。しょうがの貯蔵温度は13〜15℃です。この温度だと、しょうがの芽が動かず、新しく芽が出ようとするのを抑えられます。これ以上高くなると芽が出ますし、これ以下になると凍傷のような障害が出ます。

  • しょうがは湿度の管理も重要です。そのまま置いておくと、表面が白くなり、乾燥しすぎて劣化しますので、予冷庫で温度と湿度を調整しています。

  • 予冷庫で貯蔵して2〜3週間すると、表面がアメ色になり、茎の部分が根元のあたりからポロッと取れます。秋に収穫したものを、翌年の12月ぐらいまでの間、予冷庫で貯蔵し、調整してお届けしています。
◇ハウスの新しょうがについて
  • ハウスの新しょうがは、寒い時期に植え付けます。早い方は3月ごろから収穫しますが、6〜7月がメインになります。

  • 加温しないハウス栽培は、2月頃に定植して、7月頃に出てきます。

  • 高知は暖かいイメージがあると思いますが、2月などの朝晩はマイナス2〜3℃と、東京より寒いことがあり、夜温を保つためには重油を焚く必要があります。ただ、重油が高くなっており、30年ぐらい前は30〜40円でしたが、今は94円ぐらいしています。
◇しょうがの保存
  • おすすめは、冷凍保存です。用途に合わせて、すりおろしたりスライスしたりして小分けするか、または、小さな塊のままラップで包んで冷凍庫で保存します。しょうがの皮は、包丁でむくのが面倒なら、スプーンで簡単にこそげることもできます。

  • 冷凍しない場合は、新聞紙に包んで涼しいところに保存します。夏場はカビが心配なのであまりおすすめしませんが、冬場は1週間程度でしたら問題ありません。

  • ガラス瓶などに、スライスしたしょうがを入れてひたひたの水を注ぎ、水を替えると、2週間ぐらいは持ちます。

  • しょうがの性質上、乾燥すると、長持ちしません。

  • ハウスの新しょうがは、ほとんど保存できません。
◇しょうがの効能・効用
  • しょうがには、体を温める効果があります。昨年の冬にテレビでも取り上げられ、話題になりました。
    夏場、おろししょうがを冷ややっこにのせて食べるというイメージが強いのですが、このところ冬場の消費量が増えているのは、テレビの影響でしょう。

  • 発汗作用があるので、風邪のひき始めにいいとか、しょうがを加えた紅茶がダイエットにいいともいわれています。整腸作用もあるそうです。
◇しょうがの食べ方
  • 私どもでは、2年ぐらい前から、しょうがのハチミツドリンクのリーフレットを作成し、配布しています。しょうがをスライスしてハチミツに漬けておくと、2〜3日でしょうがのエキスがハチミツの中に出てきます。これを、冬場はホットで、夏場は氷水で割ってアイスでも楽しめます。作っておけば、1〜2ヶ月は持ちます。

  • 新しょうがは甘酢に漬けるという使い方が多いのですが、今の若い人はあまりやってくれません。そこで、昨年あたりから、新しょうがに、キュウリ、ハムを合わせてマヨネーズで和えたサラダを提案しています。ピリ辛が好きな方は生のままで、辛みが苦手なら水にさらしてからスライスします。

  • 先日、築地でご紹介したのは、新しょうがの土佐がけです。せん切りにした新しょうがと生のオクラに、かつお節を加え、めんつゆをかけて混ぜるだけです。仲卸の方が食べて、ビールのおつまみにぴったりだ、といってくれました。ごはんの上にのせてもいいと思います。夏場、火を使わない簡単にできるレシピです。8月ぐらいまでが新しょうがの時期なので、ぜひお試しください。

  • 根しょうがのかき揚げもおすすめです。サツマイモなどをいっしょに入れてもいいですが、しょうがだけでもおいしくできます。少なめの油でも揚げられ、塩こしょうでも天つゆでもおいしく食べられます。

  • しょうがの黒砂糖煮や、炊き込みご飯もおいしい。炊き込みご飯は、刻んだしょうがを米に混ぜて炊くだけです。もっとしょうがを食べていただくために、ほかにも簡単でおいしい食べ方があればぜひ教えてください。

◇高知で行っているその他の取り組み
  • 私どもは、履歴をすべて確認しており、生産履歴、栽培履歴を出してほしいといわれれば、開示・提示できます。

  • 今、高知県は、オランダと提携して、天敵を使った栽培をすすめており、しょうがだけでなく、ナス、ピーマンなども天敵を使って害虫を駆除しています。
◇質疑応答より
  • Q:みょうがもしょうがの仲間ですか?
  • A:どちらもショウガ属で、葉を見ると、よく似ています。高知のみょうがはハウス栽培なので、一年中出荷できます。露地では夏から秋にかけての1回しかとれませんが、ハウスの中で順番に植え付けをしているので、年3回くらい収穫できます。

  • Q:しょうがのパックに白いカビのようなものが出ることがあるのですが、湿気がいけないのでしょうか?
  • A:厳密にはよくわかりませんが、弱ったものに白いワタボウシ状のものが出やすいそうです。産地では一定の温度と湿度で保存して出荷しますので、市場で初めて外気に触れるわけです。できるだけ、温度を18℃前後で管理してもらえると長持ちすると思います。

  • Q:中国産との違いはどのようにアピールしているのですか?
  • A:ピリピリとした強い辛みがあるものは中国産で、高知のしょうがは、昔ながらのさわやかな辛みが特徴です。

  • Q:高知の農産物が実際に収穫から市場に並ぶまではどれぐらい時間がかかっているのですか?
  • A:例えば、ナスでしたら、今日の夕方収穫したとすると、翌日の午前中までに袋詰めなどを終え、夕方トラックで運びます。夜7時に出ると翌日の2〜3時には到着します。実際に売られるのはその翌朝なので、収穫してから3〜4日目に並ぶということになります。遠隔地だと4〜5日だと思います。

  • Q:ここ最近、東京でもハスイモが出回っているのですが、地元では、日頃、どうやって食べているのですか?
  • A:ハスイモは、土佐弁で「りゅうきゅう」といいます。皮をむいて塩もみしたものにお酢をかけ、サバなどの青魚といっしょに酢の物として食べることが多いです。スライスして味噌汁に入れる方もいます。お酢で味をつけたものを酢飯にのせ、にぎり寿司のようにパックに入れて販売しているところもあります。
 
 

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