■2010年5月16日 第2回 〜 商品情報 和歌山産「南高梅」の加工品各種

 和歌山農協連、東京事務所の前田と申します。

 そろそろ梅のシーズンですので、梅の加工品をメインにお話します。

 和歌山県の梅の代表的な品種は、「南高梅」です。

 今シーズンの梅の状況は、報道などでご存じでしょうが、低温で花がやられ、小さな実が凍結して、全国的に不足傾向。特に、小梅の被害が大きい状況です。

和歌山農協連東京事務所 前田孝男氏

 青梅は、海岸に近い地域で栽培されているケースが多いので、それほど大きな影響は受けていない。南高梅は、和歌山でも、山間部での栽培が多いので、そういったところを中心に被害が出ています。昨年対、8割ぐらいの生産量になる予想です。

 南高梅の出荷は、梅干しの相場が低迷していること、家庭消費を増やすという点からもそれほど減る傾向にはないと思います。

 山側は生産量が少ないので、6月後半、20日以降の時期のものがすぐになくなってしまうかもしれません。ピーク時期は、6月12〜13日あたりが中心。20日を過ぎると、入らない市場も出てくると思います。できるだけ20日までに仕入れたほうがいいのかな、と思っています。

 また、今はまだ若干小玉ですが、これからの状況次第で、肥大は進むのではないかと思います。

 小梅の収穫は、すでに始まっています。小梅も全国的に不作ということなので、相場は堅調に推移していくのではないでしょうか。

 まず、南高梅についてご説明します。南高梅は、「白加賀」のように何百年という歴史のある品種とは違い、若い品種で、和歌山県のみなべという地域で作られました。地域の土地や気候に適した品種を探すため、5年の歳月をかけ、品種選抜を繰り返したものです。よって、みなべ以外では、本来の特性が出にくい。全国的に南高梅の栽培が進んでいますが、全国どこで作っても本来の品種特性が出るかというと、それは非常に難しいでしょう。土質などがまったく違うので、地元の人たちは、「まったくものが違う」といいます。ぜひ、みなさんには、「本物」を選んでいただきたいと思います。

 南高梅の加工品のひとつは、「梅ジャム」です。青い梅ジャムと、成熟して黄色くなった梅ジャムの2種類あり、いずれも南高梅を使っています。一度洗ったあとに、ヘタ取りをして、冷凍させたものを使って作っています。冷凍してしまえば、シーズン通して、冬でも使えますから…。青い梅ジャムと、黄色い梅ジャム、味はお好みですが…。青い梅は、皮ばなれや実ばなれが悪いので、作業工程としては熟したもののほうが作りやすい。梅干しについても同じで、できるだけ熟したもののほうが、梅本来のいい味が出ます。梅ジャムは、ゆず茶のようにお湯で割っていただくと、熟した南高の香りがふわっと広がるので、非常においしい飲み物になります。

 梅干しは、袋を使って、簡単に漬けられる方法をご紹介します。アンケートをとると、失敗の原因の9割方が「カビ」。問題のあるカビではないので、産地では少々のカビは気にしないのですが…。袋を使うと、カビの発生をかなり抑えられます。従来の漬け方ですと、塩でもんだあと、そのまま桶に全部返すのですが、空気に触れる面が多いため、カビが出やすかった。袋を使うと、空気に触れる面がほとんどないので、初心者の方でも、カビが出ず、成功する。去年、一昨年と、いろんなところで、初めての方に挑戦してもらったのですが、ほぼ失敗はありませんでした。

  それから、「梅ラッシー」とでもいいますか…。梅シロップを牛乳で割ったものもご提案しています。梅シロップ1に対し、牛乳5ぐらいの割合で割ったものです。既製品の梅シロップもありますが、手作りの梅シロップを使ったほうが、圧倒的においしい。手作りの梅シロップのほうが味が濃いので、何かで割るとき、割るものの量をやや増やして、薄めに作ったほうがおいしいかもしれません。水割りでもいいですが、牛乳割り、豆乳割りなどがヘルシーでいいのでは…。梅シロップをお酒で割れば、即席の梅酒にもなります。

 「トマト梅」は、和歌山の「優糖星(ゆうとうせい)」というトマトをソースのようにして、梅を漬け込んだもの。優糖星は、「キャロル7」を高糖度に栽培したミニトマト。産地では、糖度基準は満たしているものの、実割れなどで外観が基準に達しないものを原料に活用しています。

 この時期になると、いろいろな雑誌で、梅が取り上げられますが、若い女性向けの媒体では、梅干しは提案されません。若い世代は漬物を作らないし、最近は、ごはんそのものを食べない、という方もいるので、「ごはんに梅干し」というよりは、「梅ジャム」などのほうがいいのではないか、と思います。

 八百屋さんと違い、スーパーでは、なかなか、提案型の販売というのができません。梅のシーズンが来たから、ただおいているだけ…というところが圧倒的だと思います。産地としても、今の売り方に対しては、このままでいいのか、という思いを持っていますので、みなさんのようなコミュニケーション力のある方々が、お客さんと情報交換をする中で、梅の文化を伝えていっていただきたいと思います。

 関東では、白加賀という品種が地域に根ざした品種です。ですから、南高がいいとか、白加賀がいいとかいうことではなくて、「いろんな梅を試してください、風味が違いますよ」と、それぞれご提案していただければいいと思います。品種によって適した加工方法があって、南高は一般的に梅干しだといわれています。果肉が多いのを生かしているわけですから、ジャムにも適している。南高を梅酒にすると、フルーティーな感じになります。さっぱりした梅酒がお好みなら、いわゆる青梅のほうが適していたりもしますので、そのあたりは、お客さまの好みに合わせて、ご提案ください。

 産地でも、農協によって、それぞれ、出荷体制が違います。みなべという農協でしたら、ほとんど家庭選別で、箱に生産者の名前と番号が入っています。もし、未熟なものや、「秀品」と書いてあるのに傷だらけのものなどがあったら、市場にクレームを出してほしい。生産者番号か名前が入っていれば、追跡できますから…。生産者指導にも生かせますので、ぜひ、ご連絡をお願いします。

 
■2010年5月16日 第2回 〜 商品情報 山形産の山菜各種

 みなさん、こんにちは。山形県東京事務所の佐藤と斉藤です。よろしくお願いします。

 先月の八百屋塾で、「みず」という山菜についてご質問をいただきました。産地に問い合わせたところ、「まだ、時期的に早くて、みずは出ないよ」といわれてしまったのですが、山形県大江町の十八才という地区の直売所の方が、「ちょっと早いけど、山に行って、とってきてあげるよ」、といってくださいまして…。送ってもらいました。

山形県東京事務所 佐藤氏・斉藤氏
赤みず
あいこ
しどけ
赤こごみ
しおで

 また、今日は、「赤みず」のほか、「あいこ」、「しどけ」、「赤こごみ」、「しおで」、という山菜もお持ちしました。

 「赤みず」は、きれいな水が流れているところで育ちます。シャキシャキとした食感で、生のまま山菜汁やとん汁に入れたり、浅漬け、漬物、煮物など、さまざまな調理方で食べます。十八才地区の直売所では、「みずとろろ」といって、みずをまな板の上で叩いて、酢や酢味噌で和えたものがおすすめだそうです。

 「あいこ」は、クセがなくておいしいのですが、若干トゲがあるので、下ゆでしてから洗って葉を取り、茎を食べます。浅漬け、茹でてお浸し、和え物、味噌汁、山菜汁などで、大変おいしく食べられます。

 「しどけ」は、中が空洞になっています。 お浸しなどで、葉っぱごと食べる。天ぷらでも大変おいしく食べられます。地元で「きどい」「しどい」というと、「味が濃い」という意味なのですが、それが「しどけ」の名の由来です。

 「赤こごみ」は、こごみの一種ですが、やや赤い。グリーンのこごみと同じように調理していただければ結構です。油と相性がいいので、天ぷらにしても、炒めてもおいしい。お浸しにするときも、ごま油としょうゆをかけて食べると美味。

 「しおで」は、「山のアスパラガス」、「山菜の王様」ともいわれており、食感がアスパラガスに非常によく似ています。お浸しにしてもいいですし、アスパラガスと同じようにマヨネーズをつけて食べてもおいしい。

 山菜について、今日、新庄からスーパーアドバイザーの佐藤さんがいらっしゃっているので、主に調理方法について、のちほどお話をしていただきます。

 また、来月は、長井市のほうで作っている「行者菜」、行者にんにくとニラを掛け合わせたものをご紹介予定です。

【スーパーアドバイザー 佐藤さんのお話】

 「赤みず」は、雪が降るちょっと前まで使われる山菜です。今の時期ですと、このまま葉をとって、漬物、お浸し、炒め物にしたり、鍋物にちぎって入れたりできますが、7月頃になると皮がかたくなるので、皮をひとむきして、サッとお湯に入れると、きれいな緑色になります。それをサラダ風にしたり、漬物にしたりと、いろいろ使える食材です。

 

佐藤栄子氏
 「あいこ」にはトゲがあり、扱うときには注意が必要です。簡単に使うためには、葉を落としてから、まな板の上に「あいこ」をおいて、塩を振り、ゴシゴシもみます。そのまま、沸騰したお湯の中に入れると、きれいにゆであがり、手にトゲも刺さらずに、うまく扱うことができます。天ぷらや味噌汁など、さまざまな料理に使えます。

 「赤こごみ」は、とれたてをすぐにゆでたり油で炒めたりしても最高においしいのですが、ぜんまいと同じように、天日干しで乾物にして保存しておくと、お湯でもどして使えるめずらしい食材です。食材加工業者が水煮加工をしたものも結構出回っています。ぜんまいと比べると、シャキシャキとしていて、おいしいと思います。ちなみに、緑色の「こごみ」は、保存しても、「赤こごみ」のようにきれいなかたちにはなりません。

 山形は、雪が降ります。雪のために、大地に豊富なミネラルが含まれます。山菜たちは、土壌が汚染されておらず、本当に安全で景色も水もきれいなところで育っています。ですから、うまみも特別かな…と思っています。

 また、山菜は、カロリーが低くてヘルシーです。料理次第で、いかようにでも、おいしいものに仕上がる。食材のうまみを生かすには、やはり、ゆでて、塩で食べるのがとてもいいのではないかと思います。

 今日は、「わらび」が紹介されていませんでしたが…。例年と違って、気温が低く、まだところどころに雪のあるところもあって、成長が遅いようです。「ビビンバ」という料理に、今はぜんまいが使われるのが一般的のようですが、本来は、わらびを塩蔵してから乾燥させたものをもどして使っていたそうです。わらびも、保存方法によって、用途の多い山菜だと思います。

 山形県の山菜は、今が旬です。東京から新幹線で3時間ちょっとですので、ぜひ、自然豊かな山形に来て、おいしい山菜を食べてください。

 
 

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