■2009年6月21日 第3回 〜 ユミちゃんの野菜ソムリエ情報「ブロッコリーブーケ」

 みなさん、おはようございます。石山です。「ユミちゃんの野菜ソムリエ情報」……。そんなコーナーができたのは、今、初めて知りました(笑)。新たなコーナーになるかどうかはわかりませんが、今日は、たまたま、ご紹介したいことがありますので、よろしくお願いします。

 みなさん、「ブロッコリーブーケ」というのをご存じでしょうか? 結婚式で、新婦さんが後ろにブーケを投げて、独身の女性に渡すという「ブーケトス」というのがありますが、その男性編です。ブロッコリーをブーケにして男性が投げる、というのが、今、結婚式ではやっているそうです。なぜかというと、独身の男性は、栄養がなかなかとれなかったり、野菜不足だということと、ブロッコリーは、わきからどんどん芽が出てくるので、子孫繁栄につながるからだそうです。

 うちの店に、この間、たまたま「ブロッコリーブーケ」の注文が入りまして…。私も全然知らなかったので、調べてみたところ、今、そういうセレモニーが行なわれている、ということでした。男性がブロッコリーのブーケを独身の男性に投げて、それを取って、新郎がそのときにマヨネーズを渡す、ということが行なわれているそうです。

 八百屋もこれからは、野菜とくだものを販売するだけではなく、野菜に関わることだったら、できることはしていきたい、と思いましたので、初チャレンジしました。「ブロッコリーブーケ」、始めて作ったので、うまくできたかはわかりませんが…。「ロマネスク」という、ピラミッドみたいなブロッコリーをメインに、「パープルカリフラワー」をまわりに飾って作りました。ネットのついたブーケ用の資材があるんです。それにブロッコリーを飾っていけば、割と手間がかかりませんでした。どちらかというと、ブロッコリーの価格というよりは、手間でお金をいただけるのかな、という感じです。予約も受け付けますし、もしやりたい方がいらっしゃったら、私のわかる範囲でお教えします。

 それから、もうひとつ。私の野菜ソムリエ仲間で、シニアマイスター講座の時に知り合った、若林さんをご紹介します。若林さんは、北海道で規格外の有機野菜を加工して、ジェラートやシャーベットなどを作られています。新宿の伊勢丹に1週間出店するために東京に来られているので、みなさんにお話をしていただこうと思いました。

 若林さんはすごく優秀なシニアソムリエです。彼女の中には、「北海道の生産者を元気にしたい」という思いがあり、日々、切磋琢磨してがんばっていますので、みなさん、ぜひ、応援してあげてください。

 加工品を作るだけではなく、生産者とのパイプも持っています。うちの店では、3年くらい前に、「シャドウクイーン」とか「ノーザンルビー」といった、なかが紫色やピンクのじゃがいもを、まだ世に出る前、生産者が試作をしている段階のときにゆずっていただいて、販売しました。他店との差別化になるのと、お客さまへの提案にもなりますので、うちとしては、なかなかいい販売をさせていただいたと思っています。

 では、ご本人から説明してもらいますので、みなさん、聞いてみてください。岩見沢というたまねぎの産地から来てくださいました、若林さんです。よろしくお願いします。

 
■2009年6月21日 第3回 〜 商品情報「北海道の規格外の有機野菜を加工したスイーツ」など

 北海道でベジフルデザインという会社をしています、若林と申します。

 たまたま、新宿・伊勢丹の、「夏のスイーツフェスティバル」に出店することができたので、こちらに来ています。石山さんに、「八百屋塾に来てみない?」と、誘っていただいたので、ご挨拶にうかがいました。

 私のテーマは、「北海道の農業を元気にしたい」、ということです。それが会社の理念でもあります。

ベジフルデザインの若林さん
 八百屋さんは、きれいな規格になったものをお売りになりますね。その規格の外に出てしまったものが、けっこうたくさんあります。私も主婦のひとりですから、これはもったいないな…と感じて、何とかできないだろうか、と。これを少しでも、利益にすることで、農家さんを元気にできないかなと、いろいろ考えてやっています。

 実際に何を作ったのかというと、石山さんからもご紹介いただきましたが、ジェラート、シャーベット、トマトのゼリーなど。スイーツばかりに偏っているのは、スイーツのほうが利幅がとれるからです。利幅がとれるということは、生産者さんから、規格外の青果物であっても、ちゃんとした値段で買ってあげられる、ということ。そのため、あえてスイーツに特化しています。

 農家さんにしてみれば、自分の作った野菜がスイーツにかわるということが、とても不思議なようです。でも、楽しみでもあるようで、できたものを生産者さんに送ると、すごく喜んでくれます。また、一生懸命農産物を作ろうかな、と思ってくださるようで、とてもいい循環になっているような感じがします。

 実は、去年、トマトが全国的にたくさんとれて、なかなか流通しなかった。有機栽培をされている方は、販路を自分で見つけなければならないので、すごく難しいんです。このままでは、何tというトマトが残ってしまう。「どうしたらいいでしょうか」というご相談を受けました。青果物としてはなかなか難しかったので、「じゃあ、加工しましょう」、と。いったん全部、きれいに洗って、ヘタを取って、冷凍していただきました。以前、ジュースを作る会社で、「冷凍することでトマトの糖度が上がる」という話を聞いたことがあったので…。すぐに全部を何とかしようと思っても無理でしたので、一度冷凍していただいて、農閑期にそれを加工をする、という形で進めていきました。今、大変ご好評をいただいております…といいたいところなのですが、実は、これが、なかなか難しい。けっこう苦戦しています。私たちは、ケーキ屋でもないし、八百屋でもないし、どっちつかずというところがあって…。そこで、この間、姫路に行ったときに、もう、こうなったら野菜といっしょにスイーツも持っていこう、ということで、野菜とスイーツを同じ売り場で売りました。「これがこんなふうになるんですよ」とご説明すると、納得していただけるので、そこそこ反響がありました。面白い取り組みをさせていただけたと思っています。

 そのほかにも、規格から外れたものというのは、けっこうあります。たとえば、アスパラ。今日お持ちしたアスパラは、北海道で有機栽培されているものなのですが、本当はもう少し大きい。袋に入らなかったので、少し切っていただきました。その農家さんは、根っこのほうが筋張っていてかたい、といわれるので、じゃあ、うんと伸ばして切ってしまえば、下のほうまでやわらかくなるだろう、という判断で、大きく育てて、下のほうを切って販売しています。慣行栽培では、ここまで大きく育てると、穂が開いて売りものにはならない。土がよくなければ、ここまで大きくはできないそうです。これは6年ものの株で、ずいぶんいろいろと苦労されて、ここまで育てられています。それでもやはり、市場に出すときは、規格が決まっていますので、1/3ぐらいは切り落としてしまう。私は、切り落とした部分を捨ててしまうのはもったいないな、何かに使えないだろうか…、という考えがあって。今、アスパラのジェラートというのを出しています。割と男性にも食べていただけるので、好評を得ています。

 それから、2Sサイズといって、とっても細いアスパラも出てきます。土がいいと、細くても長く育つ。でも、市場流通はできません。「どうするんですか?」と農家さんに聞いたら、「投げちゃいます(注:北海道の方言で「捨てる」の意味)」と。私は以前、レストランで、「細くて長いアスパラがほしい」という話を聞いたことがありましたので、あるルートを使ってレストランに出してみたら、とっても好評でした。このように、規格にのらないものを、青果物として、なんとか工夫をして出す、ということもしています。

 「シャドウクイーン」というなかが紫色のじゃがいもは、今、少しだけ出回ってきましたが、3年ぐらい前にできあがったものです。まだその頃は、種芋が普及していなくて、農家さんでもなかなか作ってもらえませんでした。少し分けていただき、石山さんのところにも送ったりしました。紫色のほか、なかがピンク色というものもあります。今、これを、ある大きな製菓会社さんに頼んで、フレークにしてもらって、流通できないかな…と思っています。

 じゃがいもは、需要がどんどん落ちています。同じものを同じところで作るわけにはいかず、北海道は特に大面積なので、3〜4年サイクルで、いろんなものを植えていくのですが、必ず、そのなかにじゃがいもが入ってくるそうです。需要が落ちているのに、じゃがいもを作らなければならない。でも、売れるわけではない。前はでんぷん工場で引き取っていただけたらしいのですが、最近はそれもない。作って、結局捨ててしまう。もし、ちょっと形を変えることによって、いろいろなところに流通させることができれば、じゃがいもを作る農家さんも、元気になって、また勇気をもって作ってくださるのでは、と…。

 どちらかというと、生産者さんの視点でお話させていただきましたが、何か私でお役に立てることがあれば、よろしくお願いします。地元の生産者さんとのパイプもたくさん持っています。けっこう変わったものも作っていますので、もし、「こんなものがないでしょうか」とか、何かあればご連絡をいただければ…、と思います。ありがとうございました。

 

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