■2012年5月20日 第2回 〜 講演「豆について」 タキイ種苗(株) 東京支店 開発課 梅本剛氏
◇はじめに
  • タキイ種苗(株)の本社は京都にありますが、私は、神保町にある東京支店に所属しており、関東全域の果菜類全般を見て回る仕事をしています。

  • 今日は、主に、いんげん、えんどう、そら豆についてお話しします。これらは、現地でタネを採り続け、生き延びてきた在来種が多い。大別すると3〜4種類ですが、現場でそれぞれ名前をつけて出しているものも数多くあり、品種の数は、正直、ありすぎてよくわかりません。
タキイ種苗(株) 東京支店 開発課 梅本剛氏
◇いんげんの品種
  • 今日並んでいるJAきみつの「鴨川グリーン」といういんげんは、千葉県の南のほうで栽培されているもの。関東では、暖かくて、光が強いところで作られていることが多い。九十九里の沿岸、鴨川、館山など千葉県の南に行くと、いんげん、えんどう、そら豆などが栽培されています。

  • タキイ種苗(株)の品種には、「ケンタッキー101」、「モロッコ」、「さつきみどり2号」、「恋みどり」、「さやっこ」などがあります。

  • 「モロッコいんげん」は、40〜50年前からある品種です。いんげん豆には、つるが伸びるものと、つるが伸びない「わい性」の2タイプあり、「モロッコいんげん」にも、つるあり、つるなしの2種類があります。「モロッコいんげん」という名前は、国のモロッコとはまったく関係がなく、単に響きがいいから、との理由でつけられたものです。サビ病、ウイルス病などの病気に強くした改良品種の「モロッコいんげん」もあります。

  • 「さつきみどり2号」は、芸能人の五月みどりさんとはまったく関係ありません。「さつきみどり2号」のほうが、生まれは早いです。豆を作るには、5月くらいがポイントなので、「さつき」の名前がついています。「2号」とあるのは、もうひとつ前の品種があり、その改良版ということです。

  • 「さやっこ」は、背が低いのが特徴で、サヤの長さは10cmほど。普通の丸ザヤいんげん豆は、14〜16cmと、もう少し長い。枝豆のように、株売りができる。どちらかというと直売所向けで、八百屋さんや市場にはあまり出回りません。小規模な面積で直売所に出している方とか、家庭菜園向けに販売しています。

  • 一番新しい品種が、「恋みどり」です。「恋(こい)」は、「濃い」にもかけています。色がすごく濃い、丸ザヤ筋なしのいんげん豆です。花がたくさんついて、まとめてサヤが採れる品種です。
◇「つるあり」と「つるなし」
  • いんげん豆は、つるあり、つるなしで、それぞれ特徴が違います。早蒔き分は、寒さに強いつるなしを使います。逆に、つるあり種は、暑さに強い。ですから、これからの時期に栽培するのであれば、一般的に、つるありの品種が使われます。ただ、最近、ハウス栽培で、加温できる環境の中でやっていると、あまり関係なくなってきています。ハウスではほとんどがつるありで、露地ではつるなし、と使い分けている方のほうが多いと思います。

  • いんげん豆が一番順調に育つ温度は、15〜25℃です。つるあり、つるなしともに同じ。ですが、多少、寒さに強い、暑さに強いと分かれているので、使い分けましょう、ということです。 つるなしは、1回花が咲いて、どっと実がついて終わり、というタイプが多い。つるありは、つるが伸び続け、その間に花がついて、実を採っていくので、うまくやれば長く作れます。適温の15〜25℃をキープするのがなかなか難しい。今年は特に、非常に寒い年でした。環境としてはメチャクチャです。ハウスの中で必死に守っていくしかありません。今までは、農家さんの技術で何とかカバーできていたのですが、最近はお天道様が許してくれない、という状況なのを頭の片隅に置いておいてください。
◇栽培で大切なのは、土と水
  • 「連作障害」とは、同じところで同じ野菜を続けて作ると、育ちが悪くなったり、病気にかかりやすくなったりすることをいいます。豆類はかなり敏感で、3〜4年は間を開けたほうがいい。畑を2〜3箇所持っていたら、場所を1年おきにクルクルと回していく。それを輪作といいます。農家さんによっては、場所がないので、同じ場所で何度も同じものを作ることがあります。私どもからご説明はしているのですが、いろいろと事情があって難しい。病気をできるだけ出さないようにするために、土壌消毒をしたり、環境を変えるために、さまざまものを土の中に入れているのが実際の現場の状況です。もし、家庭菜園で小面積でやるのでありば、少しずつ場所を変えるのが大切です。

  • 豆類は、掘り返すと、根っこにコブがついています。豆類の場合は、根粒菌が根の周辺に住み、コブのようなものを作ります。これがないと根の活力が十分に働きませんから、豆にとっては、根粒菌がものすごく大事です。根粒菌は、酸性の土が苦手です。普通に栽培をしていると、肥料を入れることで土が酸性よりになります。そこで、アルカリ性のものを土に配合して、バランスを取ります。

  • 最近は定期的に雨が降るというよりは、突然、雷雲がわいてきて、ドバーッと雨が降り、すぐにやんでしまう。それ以外のときはカラカラに乾いている。いんげん、えんどう、そら豆、枝豆などの豆類は、花がたくさん咲いて実をつけるタイミングで水がないと、膨らんでくれません。サヤはある程度できていても、中の豆が小さいままで形が悪く、曲がりが多く発生してしまいます。
◇実が採れるまで
  • 15〜25℃の一番いい温度のとき、花が咲いてから実が採れるまでは、だいたい2週間です。採るまでの期間が遅れて3週間ぐらいになるのは、寒いとき。逆に、10日ぐらいで採れるのは、暑いときです。

  • ゆっくり育つと、実が大きくなりすぎたり、逆に、小さくなりすぎたりします。大きくなりすぎて、味が薄くなるのが多い。乾燥している時期に短い期間で採れるものは、味は濃いけれど小さいものになりがちです。

  • 実がたくさんつくと、樹が弱っていきます。つるなしタイプは一気に採ってしまえばいいのですが、つるありタイプは、どっさり採れる時期がくると、樹が弱る。「波ができる」といいますが、ある時期にたくさん採ると、樹がヒョロヒョロになります。その後、花がつかなくなって、1ヶ月ぐらい間隔を開けて次の花がやっとついたとなると、寿命がどんどん短くなります。
◇病気について
  • 今年は、環境が厳しいので、病気が出やすい年です。人間も体力が落ちたときに風邪をひきやすくなりますが、植物も同じで、環境にいじめられると、簡単に病気がでます。また、実がつき始める頃も体が弱るので、病気が出やすくなります。

  • アブラムシ、コナジラミ、アザミウマなど、病害虫にはさまざまなものがいます。羽が生えた軽い虫は、風に乗って飛んできます。豆に限りませんが、台風が上陸すると、虫も散らしていきます。豆類も、同様の事態が避けられません。さらに、豆類の場合、カメムシなどに穴を開けて汁を吸われると、細胞が死んでしまいます。あるいは、蛾の幼虫が飛んできて、食べられてしまうと、穴あきだらけになってしまいます。こうした病害虫は、さまざまな防除資材を使って、なんとか防除しています。

  • 豆類には、カビが生えやすい。特に、ハウス栽培をしていると、一部にカビが生えて、大変なことになるケースがよくあります。カビは、暖かい、湿度が高い、太陽の当たる量が少ない、空気が動かない、という条件が揃うと発生します。空気中にはどこにでもカビがいて、条件が揃うと増えてしまいます。

  • これからの時期、夜の温度が上がってきて、22〜23℃以上、場合によっては、25℃以上になります。農家さんは、ハウスを開けたりしますが、最近は、防虫のために、ハウスの回りにネットを張っているので、風通しが悪い。さらに、樹が弱ってくるという条件がプラスされると、カビが一気に生えます。生えてしまったら、治療剤はほとんどありません。表面だけ消毒しても、また生えてくる。ですから、カビを生やさないようにするのが第一です。
◇えんどう豆について
  • いんげん豆は今のような暖かい時期に作りますが、えんどう豆は寒さを越えないと、うまく実がつきません。寒い環境に強いという能力を持っており、養苗は氷点下7℃くらいまで耐えることができます。ですから、えんどう豆を蒔くのは、寒い時期。12月頃に蒔いて、4月ぐらいから実をつけていきます。

  • もっとも一般的なえんどう豆といえば、「キヌサヤえんどう」。皮がやわらかく、平たくて小さいえんどう豆です。

  • 「スナップえんどう」は、皮がやわらかくて、肉が厚く、粒も大きい。このようなタイプは、水が非常に大事です。水がなくなると、中の粒が全然膨らまず、皮もかたくなっておいしくない。弊社は、「ジャッキー」、「グルメ」などの品種を「スナップえんどう」の名前で出しています。「スナックえんどう」という名前は他社さんがつけたものです。

  • 「実とりえんどう」は、「グリーンピース」のように粒をとる豆のこと。皮がかたいのが特徴です。中に粒がしっかり入っているものを採ります。「くるめゆたか」という品種がよく使われています。
◇そら豆について
  • そら豆を作っているところは限られており、自分たちで食べるために作っている人が多い。千葉県の南部に産地があり、弊社では、「仁徳一寸」という3粒ぐらい入るそら豆がメインの品種です。
 
 

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