■2012年9月9日 第6回 〜 講演「イタリア野菜について」 トキタ種苗 大利根研究農場 開発育種部 中島紀昌氏
◇「グスト・イタリア」プロジェクト
  • 埼玉県加須市で、野菜の品種改良をしており、主に、イタリア野菜を担当しています。イタリア野菜に取り組み始めて6年目になります。

  • われわれは、「グスト・イタリア」という合言葉で、イタリア野菜を普及しよう、とがんばっています。「グスト」とは、イタリア語で、「食べよう」、「楽しもう」という意味。つまり、「イタリアを食べよう、イタリアを楽しもう」ということです。
トキタ種苗 大利根研究農場
開発育種部 中島紀昌氏
◇イタリア野菜に取り組んだきっかけ
  • 弊社が世界にタネを売っていくにあたり、ヨーロッパにタネを売る基地にするため、イタリアに子会社を作りました。以降、イタリアに出張する機会が多くなり、現地でイタリア野菜を食べてみると、非常においしかったので、何とか日本に導入できないかと考えました。

  • まず、なぜ日本でイタリア野菜が手に入らないのかを調べました。イタリアと日本の一番の違いは、野菜の摂取量です。イタリアでは1日に850グラム食べていますが、日本人は400グラム弱ぐらい。私は日本人は野菜をたくさんとっていると思っていましたが、倍も違いました。このあたりにも、イタリア野菜がおいしいヒントがあるのではないか、と思いました。日本の野菜の消費量を増やさないと、八百屋さんも困るでしょうし、タネも売れません。野菜をたくさん消費する文化や食べ方なども含めて、イタリア野菜を日本に普及していこうと、このプロジェクトを始めました。

  • われわれはタネを商品として売っていますが、ホームセンターなどに「売ってください」とただ渡すだけで売れるような商材ではありません。今までは、イタリア野菜のタネを手に入れようとしても、海外のメーカーのものを輸入して売っていたので、発芽しないなどの問題がありました。生産者さんにタネが行き渡り栽培されても、直売所や店頭に説明がなければなかなか売れません。そこで、われわれがタネの品種改良を進めて日本で作りやすくし、蒔けば100%出るように発芽率を保証する、青果物にきれいなFGを用意する、レシピをつけるといったことまでサポートして、なんとか普及させよう、と考えて進めています。

  • イタリア野菜には味の濃いものが多いので、何か特別な栄養があるのではないか、と分析しています。なかなか見つかりませんが、今後に期待したいと思います。

◇栽培のポイント
  • イタリアと日本の気候を比べると、夏場はイタリアも暑く、最高気温はあまり変わりませんが、最低気温が全然違います。日本と違い、イタリアは夜温が下がります。夜の低温を必要とする野菜が多いので、日本の夏場はイタリア野菜はものすごく作りにくい。春先は、日本の気候が少しイタリアの気候に近づくので、作りやすくなります。日本では、春と秋に国産のイタリア野菜が多く出回ります。真夏は輸入物に頼らざるを得ません。真夏にイタリアに似た気候の長野県や北海道で何とか国産のイタリア野菜を作れないか、と取り組んでいるところです。

  • 降水量にも違いがあります。イタリアは雨が少なく、一年を通じて、だいたい同じように少しずつ降ります。東京は最近ゲリラ豪雨なども多く、降る月と降らない月の差が激しい。気温と降水量を見ただけでも、日本は農業をしにくい国だということがよくわかります。逆にイタリアは野菜の生産がしやすく、人間にとっても住みやすいところです。
◇イタリア野菜の説明〜フィノッキオ
  • イタリア野菜は、同じ野菜でも名前がたくさんあって混乱するので、イタリアで呼ばれている名前をそのままカタカナにしています。

  • 「フィノッキオ」は、別名「フェンネル」、日本では「ウイキョウ」とも呼ばれます。セリ科の野菜で、セロリやニンジンの仲間です。葉っぱを食べるもの、タネを食べるもの(スパイスに使用)、下の部分を野菜として食べるものの3タイプあり、この3つは品種もまったく違います。遺伝的にも遠く離れており、小松菜とタアサイぐらいの違いがあります。

  • 葉っぱを食べる「フィノッキオ」は、上から見て、まん丸になるぐらい太ったものがおいしい。葉っぱの枚数は同じなので、まん丸になったほうが1枚の葉が厚くてジューシーです。薄っぺらいものは、筋張っていてかたく、食べにくい。丸くて真っ白く仕上がったのが、いい「フィノッキオ」です。

  • 「フィノッキオ」の食べ方ですが、イタリアのレシピはイタリアンのシェフにお任せするとして、何とか和食で使えないかと思い、甘酢漬けにしてみたところ、非常に食べやすくておいしかった。隣の家のおばあちゃんが、「今日はフィノッキオの甘酢漬けだよ」などというようになれば、相当消費も増えるのではないか、と考えています。イタリアでは、サラダや、シチューのような煮込み料理に使われています。炒め物はあまり聞いたことがありませんが、用途は多い野菜です。

  • 「フィノッキオ」には品種がたくさんあるので、いくつかを組み合わせて、リレー形式で、周年回すような形になっています。産地は、長野県、熊本県、神奈川県、山形県など。まだ数が少ないので、切らしてしまうこともありますが、大きな市場に行けば、出ています。
  • 「フィノッキオ」は、国産は1個400グラム前後、イタリアやフランスからの輸入物だと1キロ近いものもあるので、大き過ぎて、日本の家庭では1個全部を消費できないのではないかと思い、「スティッキオ」という野菜を作りました。これは私が開発した野菜で、イタリアにはありません。のちほど食べてみてください。ほとんど同じタネを、株間を詰めて栽培します。味は多少薄いですが、「フィノッキオ」と同じような感じです。用途も同じですが、細くてやわらかい。バーニャカウダが流行っているので、イタリア野菜の入り口として、スティック野菜から入ってもらうのもいいのではないか、と考えています。

  • 「フィノッキオ」は霜に非常に弱い野菜なので、霜が降りる時期は露地では作れません。ハウスでも、結構難しい。春と秋が旬で、本当の旬は秋だそうです。お盆明けから今時期にかけてタネを蒔き、年末にかけて採っていくのが一番作りやすく、出回る時期になります。
スティッキオ
◇イタリア野菜の説明〜ラディッキオ
  • 「ラディッキオ」は、最も名前が混乱しています。別名、「チコリ」、「トレビス」と呼ばれるキク科の野菜で、レタスやエンダイブなどの仲間です。基本的に、サラダで食べます。

  • 「ラディッキオ」というのは、こういうタイプの野菜の総称で、種類が非常に多くあります。例えば、「キオッジャ」、「トレビーゾ」、「ベローナ」、「カステル・フランコ」など。「カステル・フランコ」は「フランコ城」というお城の名前ですが、その他は街の名前です。イタリアの各地で、昔からそれぞれ「ラディッキオ」を栽培しており、その地域にあった品種が形を変えて独特なものとして存在している、ということになります。

  • 「プレコーチェ」や「タルティーボ」というのもあって、「プレコーチェ」は早生という意味です。「タルティーボ」は晩生。それぞれのタイプに、「キオッジャ」の「プレコーチェ」、「キオッジャ」の「タルティーボ」、「トレビーゾ」の「プレコーチェ」、「トレビーゾ」の「タルティーボ」があるわけです。有名なのは、「トレビーゾ」の「プレコーチェ」と「タルティーボ」です。この2つはまったく別の野菜のように扱われていますが、同じタネで、早く採るか、遅く採るか、作り方が違うだけです。
キオッジャ

トレビーゾ
  • 国産が出回る可能性がある「ラディッキオ」は、「キオッジャ」と「トレビーゾ」だけです。ほかは栽培が非常に難しい。国内で「カステル・フランコ」を作っている方は、相当技術がある方でしょう。私自身も商業ベースにのるような栽培を成功させたことはありません。100株作ると50株ぐらいはゴミになってしまいます。「キオッジャ」は長野県に産地があり、庶民的な居酒屋さんのサラダなどにも使われています。

  • 宮城県などで作られている「プンタレッラ」は、「ラディッキオ」の花芽です。春から夏にかけて、花を咲かせるために伸びてくる茎の若芽を食べます。タネは「カタローニャ」を使います。「カタローニャ」の「プンタレッラ」というのが、この野菜です。

  • 「ラディッキオ」は、長野県、島根県、鳥取県、愛知県、山形県、北海道で作っています。周年出回っていますが、本当の旬は冬です。イタリアで一番出回るのは2月頃。2月に畑に行くと、外葉が霜にあたって真っ茶色でボロボロになっているのですが、その中に真っ赤な「ラディッキオ」があり、すごく甘くて苦みは全然なく、非常においしいです。

  • 日本で一般に「トレビス」と呼ばれているのは、「ラディッキオ」の「キオッジャ」です。「トレビス」は「トレビーゾ」からきている名前で、じつは違う野菜です。今さら変えられないとは思いますが、できれば、「キオッジャ」を「トレビス」と呼ぶのはやめたほうがいい。

  • 「チコリ」も「ラディッキオ」の一種ですが、栽培方法が異なっており、軟白をして作ります。タイプ的には、「トレビーゾ」の仲間を使います。軟白うどと山うどの違いのような感じです。

  • 「アンディーブ」、「エンダイブ」も非常にやっかいで、生物学的にいうと「ラディッキオ」の仲間なのですが、「エンダイブ」をフランス語では「アンディーブ」といいます。それが日本では入れ替わってしまっています。本来は「アンディーブ」ではないものを、流通名「アンディーブ」、また、「ベルギーチコリ」としているわけです。イタリア人やアメリカ人と話をしていて、「アンディーブが…」などというと、全然話がかみ合いません。「アンディーブ」というと「軟白チコリ」を頭に思い浮かべているのは日本人だけです。

◇イタリア野菜の説明〜ルーコラ・セルバティカ
  • 「ルッコラ」、「ロケット」と呼ばれている野菜は、どこのスーパーにもたいてい置いてありますが、「ルーコラ・セルバティカ」は、それとはまったくの別種。大根と小松菜ぐらい違います。

  • 「セルバティカ」は「野生」という意味なので、直訳すると「野生ルッコラ」。「ワイルド・ロケット」などとも呼ばれています。一番よく知られている流通名は、「セルバチコ」です。

  • アブラナ科の野菜で、「ロケット」と比べると、味が非常に濃くて、レストランのシェフの中には、「ルーコラ・セルバティカ」でなければダメ、という人もいます。
ルーコラ・セルバティカ
  • 「ロケット」よりおいしいのに流通しないのは、作りにくいためです。タネが非常に小さくて扱いにくく、発芽力も弱い。抽苔しやすく、花がすぐ咲いてしまうので、商品価値が下がります。なかなか難しいのですが、品種改良して、なんとか日本でメジャーにならないか、と取り組んでいます。

  • 「ルーコラ・セルバティカ」に力を入れている理由のひとつは、栄養価が高いことです。「ルッコラ」も栄養成分が豊富なのですが、ビタミンCやカルシウムはその2倍ぐらいあります。妊婦さんがとらなければいけない葉酸という成分も、「ルーコラ・セルバティカ」には豊富に含まれています。普通に食べられる野菜の中ではNo.1ではないでしょうか。枝豆にも多いのですが、枝豆の成分分析には、サヤが含まれています。サヤは食べられませんので、葉酸をとるなら、「セルパチコ」がおすすめです。葉酸は最近注目されている成分で、埼玉県の坂戸市では、市ぐるみで「葉酸をとりましょう」というプロジェクトをしています。

◇イタリア野菜の説明〜ロマネスコ・カリフラワー
  • 「ロマネスコ」は、ブロッコリーではなくカリフラワーです。といっても、ブロッコリーとカリフラワーは、色と花蕾の作り方が少し違うだけで、ほとんど一緒のもの。江戸菜と小松菜ぐらいの違いしかありません。「ロマネスコ」は、遺伝的にはカリフラワーと呼ぶのが正しいのですが、ブロッコリーの血も3割くらい入っています。

  • ときどき、「ロマネスコ」に、「ブロッコリーとカリフラワーを掛け合わせた野菜」などと説明が書かれていることがありますが、それは間違いです。「ロマネスコ」からブロッコリーとカリフラワーが進化してきた。こちらのほうが古い野菜です。
ロマネスコ・カリフラワー
  • 「ロマネスコ」は、「ローマの」という意味です。ローマ中心に食べられており、ローマから離れたところに行くと、知らないイタリア人もいます。むしろ日本でのほうがメジャーになりつつあるかもしれません。

  • 旬は秋から冬にかけて。今まで、日本では、春には作れなかったのですが、品種改良をして、春も作れる「ダ・ビンチ」という品種ができました。

  • 産地は、島根県、鳥取県、愛知県、北海道など、ブロッコリーの産地で作っています。

  • 去年すごくたくさん出回ったので、今年はおそらく余ってしまうと思います。値崩れすると、生産者さんが作るのをやめてしまうので、八百屋さんにもっと売っていただきたい、と思っています。30年ほど前にも、「ロマネスコ」を「うずまき」という名前で流通させたそうですが、一気に出回って値崩れを起こし、消えてしまったと聞きました。同じことを繰り返したくはないので、少しずつ成長してくれれば、と思っています。

◇イタリア野菜の説明〜チーマ・ディ・ラーパ
  • 「チーマ・ディ・ラーパ」は、夏はほぼ作れません。これから秋にかけて出て、春まで出回ります。旬は秋で、春は作りにくい野菜です。

  • 「チーマ」は「蕾」や「花」という意味で、「ラーパ」は「カブ」。ただ、実際はカブではなく、「チーマ・ディ・ラーパ」専用の品種です。

  • 「チーマ・ディ・ラーパ」で一番いいものは、ブロッコリーのようなこぶし大の花蕾がついています。数はそれほど出回りませんが、ブロッコリーよりおいしい。その後はわき芽を収穫して、小さな親指くらいのものを束にしたのが出回ります。

  • 産地は、九州や静岡県など。

  • 味は、白菜や青梗菜の花によく似ています。ブロッコリーの青臭さを3割減させて、それに、からし菜に似たようなフワッとした香りがある感じ。ナッツのような味がする、という人もいます。茎もやわらかくて非常においしいです。

  • 「スティック・セニョール」はブロッコリーの小さな花蕾なので、「チーマ・ディ・ラーパ」とは違うものです。
◇イタリア野菜の説明〜テーブル・ビーツ
  • 「テーブル・ビーツ」は、「ビート」とも呼ばれます。イタリア語では、「バルバ・ビエトラ」といいます。

  • 真っ赤な「ビート」と黄色い「ビート」があり、赤いのは「デトロイト・ダークレッド」という品種。通称、「デトロイト」と呼ばれます。少し縞模様が入っているものもあります。

  • 主に出回っているのいるのが赤い「デトロイト」で、最近出回り始めたのが、「ゴールデン・ビーツ」。じょうずに作ると、色が鮮やかな山吹色になります。
テーブル・ビーツ
  • 「ビート」は、ボルシチなどのスープに入れるのはいいのですが、生だと泥臭い。紅白の縞模様の「キオッジャタイプ」があり、これは、「デトロイト」などに比べると味が薄くて、イタリアでは「ビート」の味がしない、と人気がありませんが、日本人には合うと思います。われわれは、「キオッジャタイプ」に「ゴルゴ」(うずまきの意味)と名付けて商品化しています。まだあまり出回ってはいませんが、長野県で作っています。クセがないので、薄くスライスして、ちょっと酢でしめると、おいしく食べられます。

  • 「ビート」の赤い色は水溶性なので、スープに入れるとスープが真っ赤になりますし、漬け物に少し混ぜると、赤い色をつけることができます。ただ、この色はすぐに落ちます。色を固定するには、酢などの酸に漬けると落ちなくなります。

  • イタリア語で「バルバ・ビエトラ」と、名前に「ビエトラ」がついていますが、「ビエトラ」というのは「ふだん草」のことです。「スイス・チャード」も同じ仲間。本来の「ビエトラ」は、白く太い軸に大きな葉がつくものですが、ベビーリーフにも使います。「ビート」の葉も、「ビエトラ」として流通している場合があります。

◇イタリア野菜の説明〜バジル
  • 「バジル」は、イタリア野菜の代表格で、日本でもごく普通の野菜になりました。真夏が大好きで、冬はまったくダメな野菜です。

  • 小さな葉っぱで、普通の「バジル」とは品種がちょっと違うものもあり、スイーツなどの飾りにおすすめ。香りや味は同じです。

◇イタリア野菜のこれから
  • イタリア野菜のタネの売り上げは、毎年3倍ずつ増えています。注目を浴びており、将来性はあると思いますが、これからもさまざまな取り組みが必要です。八百屋さんや卸、仲卸の方も含めて、情報を共有し、アピールしていきたい。日本の人口は減っていきますし、野菜の消費量も伸びる見込みがないので、おしゃれであるとか、体にいいというイメージで進めていくといいかもしれません。

  • われわれ種苗会社と女子栄養大学、埼玉県にある和食レストランのチェーン店で、女子大生が作ったレシピを和食レストランで出す、という取り組みを行っており、「ルーコラ・セルバティカ」を使った蕎麦パスタを提供しました。生産者さんも加わってもらい、ものの流れを全部作ろう、というプロジェクトです。メニューのめずらしさや、体にいいという点、女子大生が作ったという点を前面にアピールしています。こうした取り組みを続けて、イタリア野菜の知名度を上げ、ブランド化して、固定客を育てたい、と考えています。今後の具体的な活動はまだ考えている段階ですが、みなさんとも一緒に何かできれば、と思っています。
◇質疑応答より
  • Q:イタリアでは、今、F1と在来種のタネのどちらが多いのですか? また、旬の時期の「ラディッキオ」は苦みが少ないとのことでしたが、どういった料理で食べるのですか?
  • A:タネは、F1が増えています。旬の時期の「ラディッキオ」は、別物かと思うくらい違います。料理法は、サラダで食べるか、油で煮るようにして食べます。よく炒めて、ドロドロになるくらいやわらかくする。それを付け合わせになどにします。日本は、サッとゆでることが多い。ただ、イタリア野菜は味が濃いものが多いので、そういう調理方法のほうが向いているようです。「チーマ・ディ・ラーパ」も、ドロドロになるまでゆでると、甘みが強くなっておいしいです。

  • Q:「ラディッキオ」は、日本では、苦くなければ「ラディッキオ」ではない、という面があるような気がするのですが?
  • A:イタリア人でも、苦い「ラディッキオ」は嫌いな人は結構います。冬、旬の時期になると、おいしいから食べる。日本人シェフがイタリアに修業に行き、苦い「ラディッキオ」をいかにおいしく調理するか、苦さを生かした料理をどう作るかを学んでこられる。日本に帰ってきて、国産の「ラディッキオ」を使うと、苦みが薄くてイタリアで食べた味と違う、となる。苦いのが好みでしたら春や夏の「ラディッキオ」を使い、冬は苦みがないので、両者を使い分けていただけるといいのではないでしょうか。

  • Q:イタリア野菜の代表というと、「ズッキーニ」ですが、国産のものはあまりおいしくない。現地の味に近づけることはできないのでしょうか?
  • A:おっしゃる通りで、日本の「ズッキーニ」はかたくてあまりおいしくありません。イタリアの「ズッキーニ」は、色が薄く、果肉も皮もやわらかいのが特徴です。皮にすぐ傷がつくので、輸送性がない。日本では皮に傷がついていると買ってもらえないので、品種改良をして、皮をかたくしてしまいました。「TSX708Z」というのが、日本の「ズッキーニ」です。プロ向けで、あまりおいしくはないのですが、どんな状況でも、「ズッキーニ」の形にはなります。日本でも、「ズッキーニ」はメジャーになりつつあるので、今後おそらくいろいろな要望が出てくるだろうと思って、われわれは、今まで日本にはなかったタイプのおいしい「ズッキーニ」を少しずつ販売開始しています。「ステラ」、「バンビーノ」、「パローネ」の3品種は、イタリアの現地のものを少しだけ改良して作りました。輸送にはあまり向いていませんが、家庭菜園などで作っていただくと面白いと思います。これからは、「ズッキーニ」といってもいろいろなタイプが出回るので、消費者の方が賢く選んで、この料理にはこの品種、となれば面白い。われわれもどんどん情報発信をしていかなければ、と考えています。

  • Q:国産の「ロメインレタス」や「ラディッキオ」は、輸入物と全然違って、おいしくないといわれることがあるのですが?
  • A:日本は暑すぎるので、「ロメインレタス」を作りにくいんです。サイズも海外のほど大きくはなりません。「ラディッキオ」も、技術がある方がじょうずに作ればできるのですが、日本の夏を乗り切ることが難しい。どんなにうまい人が作っても、サイズは小さめになります。

    ※最後に、中島氏より、「本日、新宿伊勢丹の地下1階でイタリア野菜フェアをしています。北海道の生産者さんが来ていて、いろいろなイタリア野菜を売っているので、よろしければお立ち寄りください。明日か明後日までやっていると思います」とのご案内がありました。
 
 

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