■2012年8月19日 第5回 〜 勉強品目「なす」 東京青果(株)個性園芸事業部 副部長 野原秀司氏
◇勉強品目「なす」

なす(全体)の入荷量

 (全体) 
  7,557 トン 
 1位:高知県 
1,971 トン 
 2位:栃木県
2,721 トン 
 3位:茨城県
832 トン 
 4位:群馬県
660 トン 
 5位:埼玉県
  336 トン 

 

東京青果(株) 個性園芸事業部
副部長 野原秀司氏
【小なす】
 (全体) 
54 トン 
 1位:山形県 
32 トン 
 2位:高知県
19 トン 
 3位:茨城県
 2 トン 
【米なす】
 (全体) 
216 トン 
 3位:高知県
125 トン 
 4位:秋田県
39 トン 
 5位:奈良県
  37 トン 
【長なす】
 (全体) 
3,568 トン 
 3位:福岡県
2,364 トン 
 4位:茨城県
628 トン 
 5位:熊本県
  461 トン 
※2011年4月〜2012年3月、東京青果への入荷量
  • 「シチリアなす」はイタリア系のなすで、茨城県の個人農家で作っているものです。イタリア料理店でよく使われるなすで、油との相性がいい。ラタトュイユなどの煮込み料理にも使われます。

  • 「赤なす」は熊本産。地元では、焼いたり煮たりして食べられています。関東にはあまり出回っていませんが、非常においしいなすです。これを品種改良して「肥後むらさき」ができた、と聞いています。

  • 「長なす」は、福岡が有名ですが、茨城でも多く作られています。長い分だけ食べる部分が多いので、もっと活用するといいと思います。

  • おなじみの「千両なす」は岡山が一番有名ですが、各産地で作られています。日本一早く「千両なす」を出す岡山の宮崎さんという方がいて、日本に30人ほどしかいない農業の匠にも選ばれています。宮崎さんの「千両なす」は、8月下旬くらいから、東京青果に出荷されます。

  • 栃木では、「千両」と「式部」を多く作っています。店頭では、ただ「なす」として売られるので、両者は見分けにくいかもしれません。

  • 「黒べいなす」は皮がかためなので、店持ちがいい。

  • 西条の「絹かわなす」は、すごく大きくて、緻密で非常においしい。愛媛の伏流水で作られたもので、今日は塩もみで食べていただきますが、焼きなすにしても美味です。

  • 大阪、泉州の「水なす」は、浅漬けで食べることが多い。やわらかいので、早く漬かります。半生で食べるような用途に向いています。

  • 「十全なす」は、系統的には「水なす」と同じ。別名「梨なす」とも呼ばれています。これも漬物向きです。

  • 「賀茂なす」は、京野菜のひとつで、価格が高い。田楽にすると非常においしいなすです。ひとつひとつに生産者の名前をシールで貼って、付加価値をつけています。

  • 「丸なす」系統は、田楽など、「賀茂なす」と同じような食べ方が向いています。輪切りにしてソテーにしてもおいしい。

  • 京都の篠ファームで作っている「京しずく」は、非常に紫が鮮やかですが、加熱すると、色があせてしまいます。

  • 埼玉産の「青なす」は、丸なすと同じような感じで、味にそれほど特徴はない。田楽に向きます。別名「白なす」とも呼ばれています。

  • 「米なす」も田楽に向く。見た目がとてもきれいななすです。

  • 「寺島なす」は、江戸東京野菜のひとつです。もともと墨田区の向島が「寺島」と呼ばれていたことから、この名前があります。町おこしの一貫として「寺島なす」を増やそうという取り組みがあり、三鷹の星野さんという方から譲っていただいた苗を、江戸川の小松菜農家さんの圃場を借りて作ったなすです。非常に皮がかたいので、油で揚げて食べるといいと思います。

  • 全国的な特徴としては、南のほうは長なす系統、関東は短なす系統です。

  • なすは皮をむかず、水にさらさないで食べていただきたい。そうすると、皮に含まれる色素、ナスニンをとることができます。
[高橋芳江さんより]
  • 一昨年、私がお手伝いしている「野菜の学校」で、「日本全国なす自慢」というイベントをして、そのときも全国各地のなすを集めました。南のほうには大きななすが多く、「佐土原なす」、「絹かわなす」などがあります。また、山形には「民田なす」などの小なすが各種あり、新潟の「焼きなす」、「巾着なす」なども大変おいしいなすです。残念ながら時期的にまだ出ていないものも多く、今日持ってこられなかったものもあります。
高橋芳江氏
  • 私の知っている生産者さんで、個性豊かななすを作っている女性がいて、今日はその中からいくつかお持ちしました。細長い「ひもなす」は、長さを生かした切り方で、サッと炒めて、盛りつけるといい。フレンチで使われたりしています。「フェアリーテール」は、「京しずく」と似ているのですが、皮がかたい。生産者さんによると、パンクしてしまうので皮に楊子で穴をあけてから揚げるといい、といっていました。すごく小さいので、それを丸ごと揚げて、サラダにのせたりすると素敵です。八百屋さんの店頭で変わり種のなすを売ることはあまりないかもしれませんが、レストランへの納めでは、めずらしいもの、形のきれいなものなどを要求されるので、常々、あちこちの農家さんにいって、こうしたものを探しています。

  • 「白なす」には、卵型のほか、細長いタイプもあります。

  • 「マクアポ」は、タイ料理によく使われるなすです。

  • 今日は、唐辛子もお持ちしました。「黒唐辛子」は、加熱すると色が変わってしまうので、そのまま細く切ってサラダに入れたりします。辛くはありません。「バナナピーマン」や「ひも唐辛子」も辛くないので、サッとゆでてめんつゆに漬け込んで、蕎麦の薬味にするとおいしい。パプリカには、黄色や黒もあります。オクラにも、赤や白があり、薄く切ってサラダに入れ、色を楽しむといった提案をしています。
◇なすなどの写真
赤なす
(熊本)
長なす
(茨城)
千両2号
(茨城)
千両2号
(栃木)
式部
(栃木)
黒べいなす
(茨城)
絹かわなす
(愛媛)
泉州水なす
(大阪)
賀茂なす
(京都)
京しずく
(京都)
信州丸なす
(長野)
八石なす
(新潟)
小なす
寺島なす
(東京)
米なす
(高知)
青なす
(埼玉)
白なす
シチリアなす
(茨城)
ローザビアンカ
スティックテイスト
ひもなす
ピンポンなす
唐辛子
唐辛子
唐辛子各種
紫ピーマン
オクラ
オクラ
オクラ
     
 
■2012年8月19日 第5回 〜 勉強品目「梨」 橋本幾男氏
◇勉強品目「梨」
  • 梨は今、赤梨の「幸水」が主です。「幸水」は昭和16年に、「菊水」と「早生幸蔵」という梨を掛け合わせたもの。昭和22年に初めて実がなったのですが、粒が小さかったので、なかなか普及しなかったそうです。昭和34年頃、神田市場に初めて入ってきたとき、3S、4Sなどの細かいのばかりだった。でも、今のような青い色の梨ではなくて、真っ赤なものが入っていました。

  • もっと梨の色を回してから出荷してほしい、と常々リクエストしているのですが、なかなか直らない。赤梨はふけやすいので、早く売ったほうがいい。色を回してくれれば、味がよくなって、もっと食べてくれると思います。ガリガリの青い梨ばかりでは、お客さんも満足してくれません。みなさんも市場に行ったら、セリ人にいうようにしてください。そうしないと、おいしい梨が出てきません。
橋本幾男氏
  • 「幸水」がようやく大きくなりだしたのが昭和45年頃です。ハウス栽培になり、ジベレリンを使うようになりました。そうすると実が大きくはなるのですが、やわらかくなる。ヘタを見るとジベレリンを使ったものかどうかはすぐにわかります。

  • 「秋麗(しゅうれい)」は、熊本で平成20年頃から出始めました。「幸水」に「筑水(ちくすい)」を掛け合わせたもの。昭和45年頃から始めて、出てきたのが平成20年なので、かなり時間がかかっています。

  • 今、大田市場で一番高い柏井の梨も持ってきました。価格はお盆前に比べるとやや下がっています。

  • 昭和30年代、果物の専門店は青梨の「二十世紀」を主に扱っていました。ですから、神田市場では、赤梨はあまり売れなかった。川崎や横浜は、赤梨を専門に売る店が多く、うちの店も玉川の「長十郎」を主に売っていました。今は、「幸水」がメインになっています。

  • 梨以外では、今年は、「サンピーチ」、「あかつき」、「まどか」といった福島の桃がすごくおいしい。ぶどうは、「藤稔」と「ピオーネ」を掛けた「プラックピート」が大きくて見事だったのですが、脱粒が多かった。志賀高原の「ピオーネ」と「巨峰」は素晴らしかったです。最近、長野から、タネありのぶどうもようやく出てきたので、お試しください。
◇梨の写真
幸水
(茨城)
幸水
(千葉・長生)
幸水
(千葉・柏井)
秋麗
(熊本)
 
 

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